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「90分間プレッシングを続けることは不可能ではない」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Shinichiro EMA , Getty Images

「そういうフットボールを好んでいる。単純にそれだけだ」

――ここ数年の欧州主要リーグにおいて、あなたのラージョはバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンに次ぐポゼッション率を記録しています。

P 注目を集めているのは数字よりも、無謀な挑戦に臨んでいるということだろう。ただ我々にとっては、最も誇りを感じている部分でもある。ラージョはマドリッドではレアル・マドリー、アトレティコ・マドリーに次ぐ3番目のクラブとされ、予算的にはヘタフェも下回るクラブだ。そのために毎シーズン10~12選手の入れ替えがあり、ベースの構築が難しいプレースタイルの実践を、より困難なものとしている。

 実際、我々のパフォーマンスを安定させるためには、ほかのチームよりも多くの時間をかけなければならない。しかし、だからこそ我々が成し遂げていることには大きな意味があるんだ。我々の実践するプレースタイルはじつに難易度の高いものであり、簡単に行えることなど一つもない。

 選手たちの動きのメカニズム、冒すリスクの高さ、自分がフットボールに抱く信念……。そのすべてを飲み込んだチームを生み出すのは実に骨が折れる作業だ。しかし私にとっては、やりがいのある挑戦でもある。

――なぜリスクを冒し、攻撃的なプレースタイルを実践するのでしょうか?

P そういうフットボールを好んでいる。単純にそれだけだ。それは「なぜ青色を好むのか?」と質問するのと同じであり、「好きだから」と返す以上の説明などできやしない。私は攻撃的なフットボール、美しいパフォーマンスを愛している。

 それは私の心を打つものであり、だからこそ選手たちに対して、そうプレーしてくれと必死に訴えることができる。もちろん、ほかのプレースタイルや練習方法があることも理解しているし、最大限の敬意を払うよ。監督という職業はすぐに首が飛ぶものだからね。

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