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ペップが選手に課す「鉄の掟」。ガチガチの“管理主義”は英国風土に適しているのか?【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

選手に「鉄の掟」を課すペップ

 今にして思えば、このパロディーは奇妙なほど、宿命のライバル「ペップとジョゼ」それぞれの奇特な個性と、今に続くその後の現実(の成り行き)を示唆しているように受け取れないか。

 良くも悪くも戦闘員(=プレーヤー)の頭越しに超然と振る舞い、かつ、独りよがり然とした目立ちたがり屋を地で行くようなジョゼと、寄せ集めの荒くれ者たちを組織する上で、その一見して人好きのする兄貴分肌と、実は裏で事細かに強要する「鉄の掟」が撚り合わされ、しかしどこか空回りの様子も見え隠れするペップ。

 その通りに、ユナイテッドはこの敗戦から「ルーニー現場監督」の自信喪失的失調もあってか失速、一方のシティーも決め手を欠いて勝ち切れないもどかしさが目について…。

 そう、勝って勝ち進んでいる限り、どんなにアクの強い超個性派指揮官でも、その手腕はプラス評価に類される。だが、ひとたびその歯車がぎしぎしときしみ始め、あちらこちらと不協和音の予兆が聞こえてくるや否や、下世話なゴシップねたまでもが取り沙汰される運命にあるのかもしれない。

 ここでは、プレミアファンには先刻承知の「やはりそうきたか」的“ジョゼ禍”、もしくはその兆候についてはさて措き、ペップの“迷走ネタ”について踏み込んでみよう。

 まず、以前にも触れた通り、「名将グアルディオラ」の名声の中身は、どこまでいっても「優勝して当たり前」の戦力をベースにしてしか、現時点では語す術がない。ましてや、プレミア、というよりも、ヨーロッパでも特異な体質を持つイングランドの風土は初体験。それを言うならドイツだってという突っ込みもあろうが、彼が率いていた頃のバイエルンは少々の“行き違い”があっても、優位は断トツ(今だってそうか?)の存在だった。

 いや、仮にその辺りに目をつぶってみても、やはりイングランドのフットボールカルチャーという代物には、個人的経験から言っても比較を許さない異質なものがありそうだ。

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