プレミア流 ワイドアタックの戦術的進化(後編)

『マンU、トッテナム、アーセナル、ニューカッスルに見る“オープンスペース”有効活用法』
サイドからクロスを上げ、ゴール前では屈強な男たちが肉弾戦を繰り広げる。プレミアリーグでよく見る光景だ。昔からのスタイルではあるが、近年では戦術的な“崩し”が見られる。重要なのはクロスを上げる、そしてフィニッシュに持ち込むまでの過程だ。プレミアでの実例からワイドアタックの真髄を紐解いていく。

2012年12月30日(Sun)15時21分配信

text by 河治良幸 photo Kazuhito Yamada
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アグレッシブなワイドアタックを見せるスパーズ(写真はビラス・ボアス監督)【写真:山田一仁】

【前編はこちらから】 | 【欧州サッカー批評5】掲載

アシュリー・ヤングとエブラのコンビが見せる崩し

 サイドをより崩してチャンスを作ろうとする場合、SBがSHを追い越す形が有効だ。それには外側から追い越す方法(パターン3)と、内側から追い越す方法(パターン4)がある。前者はワイドな位置からのマイナスクロス、後者は中央付近からのショートクロスやミドルシュートにつなげやすい。ただ、この形を作り出すにはSHの高いキープ力とSBのスピード、駆け上がるタイミングの良さが要求される。

[パターン3]SBが外側に追い越してクロス

マンUのエヴラに見られるのが[パターン3]。右利きのヤングが内向きにボールを持って相手SBを引き付け、外側からオーバーラップする。

 パターン3の使い手として代表的なのが、マンUのアシュリー・ヤングとエヴラの左サイドのコンビだ。右利きながらヤングが内向きにボールを持ち、相手の守備を引き付ける。それにより空いたスペースをエヴラが一気に付き、ヤングから縦パスを受けてマイナスクロスに持ち込むパターンは、プレミアリーグ王者の攻撃においても最も基本となる攻撃の1つだ。

 外から追い越す場合、メリットは高く、角度のある位置からDFが対応しにくいクロスを供給できること。そして一連のプレーの間に、中央や逆サイドの選手がゴール前に飛び込む時間を稼げることだ。特に相手守備の全体がボールサイドに引っ張られやすい。そこでGKとDFの間を通す様なクロスが出てくれば、ファーサイドに飛び込んだ選手がフリーでシュートを決める様な状況も生まれる訳だ。

[パターン4]SBが内側に追い越してシュート

トッテナムの右サイドのように近年[パターン4]が増加している。ウォーカーが内側に走り込み、レノンのパスを受けてシュートする。

 その一方で、ここ最近で増加傾向にあるのが、パターン4のSBが内側に追い越して行くパターン。トッテナムの右サイド、レノンとウォーカーがこの形を得意としている。右SBのウォーカーが走りながらレノンからのパスを引き出し、斜め前方へのドリブルから強烈なミドルシュートを放つ。多彩なサイドアタックを誇るトッテナムにおいても、強力なオプションとなっている。

 SBが内側、つまり中央方向を突くことで、相手のセンターバックが遅れてマークに来れば、周囲の選手がフリーになりやすい。また自らのシュートやスルーパスなど攻撃の選択肢も多くなる。その分、SBの選手にも攻撃のイマジネーションが求められるパターンだ。

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