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応援タブーの境界線。窮屈な規制がサッカーをつまらなくする!?

Jリーグも開幕から20年を迎え、サポーターの応援文化も徐々に熟成されてきている。そこで、応援におけるタブーとスタジアムにおいてのマナーについて、海江田哲朗氏に迫ってもらった。

text by 海江田哲朗 photo by Kenzaburo Matsuoka

【サッカー批評issue61】掲載

応援タブーの際どいラインはどこ?

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【写真:松岡健三郎】

 編集部から最初に提案されたお題は「応援タブーの境界線。スタジアムのマナーとルール考」。難題である。単にむつかしいだけなら、時間をかければどうにかなるかもしれないが、当事者でもない自分が境界線をピシッと引くなんてことができるとは思えない。

 そもそもタブー(禁忌)とはなんだ? 手元にある『大辞泉』(小学館)には〈ある集団の中で、言ったり、したりしてはならないこと。法度〉とある。要するに、暗黙の了解に基づく、その集団ならではの禁じられた掟。

 真正面からこれを論じるなら、いい子ぶった話にならざるをえない。暴力反対。人種差別、論外。政治問題を持ち込むな。公序良俗に反する行為は全部いかんと。

 私は担当編集のLさんに訊いた。
「応援タブーの際どいラインというのがわからない。過去、どのあたりの事件が賛否両論分かれると思います?」
「たとえば、2年前にあった仙台の横断幕の件とかどうですかね」

 2011年8月27日、J1第24節、ベガルタ仙台とモンテディオ山形による、みちのくダービーで起こった出来事だ。

 この試合は仙台が2-1で勝利を収め、17位に低迷する山形に対し、仙台ゴール裏の一部のサポーターが「りあるとーほく(笑)まだ名乗るの?」「サヨナラ大好きなDio」などの横断幕を掲げた。「さよなら山形!」のコールも発せられたという。

 結局、くだんのダンマクは周囲の仙台サポーターからも非難を受け、警備員が引っぺがした。その後、仙台の白幡洋一社長、手倉森誠監督が謝意を表す事態に発展している。同年3月11日、東日本大震災が起き、宮城県が支援を受け、復興途上にあったこと(現在も引き続きそうだが)もこの出来事に影響している。

 タブーというほどではないが、類似した事件は数多く、妥当な線か。「それって応援じゃないでしょ」という意見は正しいのだろうけど、現実はそれも範疇に含まれる。

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