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戸田和幸という生き方(前編)

text by 大泉実成 photo by editorial staff

プロ一年目に感じる壁

──そうですね。財前さんのパスに反応して、という選手でしたね。

戸田 長田(道泰)は能力高かったけど、フォワードであんなにすごい長田が、ここに来るとサイドバックになっちゃうんだ、と思った記憶はありますね。こういうとこに来る人がプロになるのかな、と思ったんですけど、そんなことはなかった。でもここにいたことはためになってるんでしょうね。個人的には昌邦さんのユース代表のほうが実になりましたけど。あのユースは立ち上げからいましたから。ワールドユースは大きかったですね。

──山本監督の指導で印象に残っているのは?

戸田 ディテールですね。1センチとか、0コンマ何秒とか。最初は感覚でしかないんですけど、口酸っぱくして言ってもらって、練習して、本番で強い相手とやれて。もちろん当時はプロ(96年に清水エスパルスに加入)になってたんですけど、最初のうちは試合に出れなかったので、ここでやれたことは自信になりましたね。

 いろんな国を見ましたけど、アジアレベルだと韓国、ヨーロッパではスペインにはほんとにうまいやつがいましたし、ワールドユースが終わってから僕はチームでレギュラー取れたんで、本当の意味で自信につながったんでしょうね。

 でもプロの一年目は悲惨だったな。

──やはり壁がありましたか。

戸田 (うなずく)。高校のレベルで作ってきたものが、すごいスケールがちっちぇーな、ということに気がついた。身体能力からスピードから全然違うので、高校時代に理詰めでやってたことが全然通用しなかったんですよ。結局そうじゃなくてひらめきとか、サッカーの即興の部分が重要だというのがわかったんですね。

──先ほどの森崎さんもそうですけど、壁があってどうしたらいいかわからないときに、方向性というか、光みたいなものが見えるかどうかというのは大きいと思うんですね。

戸田 僕も見えてないんですよ。どっぷりつかるタイプだから。逃げないし、逃げれないので、物事に対してどこまでも沈んでいくタイプなんですよ。もがくんですよ。

──このままじゃ通用しない。どうしようと。

戸田 通用しなくて、クビになるか、生き残るかっていう話になるから、どうすればいいんだろうっていうのを延々と考えますよね。僕は他のものに逃げた経験が一回もないから、まあ性格の問題ですかね。

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