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日本代表 10年前

フォーメーションから読む。日本はいかにしてオランダを苦しめたのか?

text by 川本梅花

ロッベンが守備を強いられオランダは苦しい展開に

 ピッチの中に入ってプレーしてくる香川に対して、オランダのSBがついて行ってケアしないので、CBが対応することになる。オランダのDFは香川の動きに完全に剥がされてしまって破綻した状態。

 CBが両手を上げて「俺がこの選手(香川)をマークするのか?」と不満を言わんばかりの態度を示す。もし、オランダのSBが香川の動きについていけば、後半になってからの試合の流れが、日本に傾かなかったかもしれないと思わせるくらい大きな局面だった。それだけ、香川の動きが局面に変化をもたらしたのだ。

 日本のプレスに対してオランダはビルドアップができなくなる。その結果、オランダはロングボールでの単調な攻撃のみとなった。

 日本に流れが傾いた原因は、選手交代で入ってきた選手の動きと配置によって中盤で数的優位を作れたことと、同点になってオランダの右SBが香川の動きについていかなければならなくなって、中へ絞ってケアすることで、逆にサイドにスペースができることになる。

 交代して入った左SBの酒井が、そのフリースペースを利用して前に行くことで、ロッベンが下がって守備で対応しないといけないことになった。下がって守備に回るということは、攻撃参加に行くまで距離と時間がかかるので、ロッベンにとって、オランダにとっては守勢に回るという厳しい状況になったのである。

【了】

プロフィール

監修:林雅人
1977年生まれ。日本体育大学で選手として活躍したのち、2000年からオランダへ渡り、1部リーグのSBVフィテッセ・アーネム(SBV Vitesse Arnhem)でU‐11からU‐19までコーチ、監督を務めた。日本人初のオランダサッカー協会公認1級ライセンスのほか、ヨーロッパサッカー協会公認A級ライセンスを取得。2008年に帰国後は、東京23FCコーチ、浦和レッドダイヤモンズ監督通訳を歴任し、2012年よりフェリーチェサッカースクールにてコーチを務めている。

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