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アジア 10年前

アジア最古のリーグへ。横浜FC香港の挑戦と苦闘

text by 長沢正博 photo by Masahiro Nagasawa

格安のチケット、国内リーグの低迷… 通用しない日本流のクラブ運営

 経営上の苦労は絶えない。

 香港では試合運営をスタッフも含めてすべて協会が行い、売上と経費はホームチームが持つ。入場料は60香港ドル(1ドル=約13円)と日本に比べて格安。その中で平均入場者数が1,000名前後とあっては、興業収支を黒字にするのは至難の業だ。「例えば平日の夜の試合でお客さんが少ない場合、スタッフを少なくして運営費を抑えれば赤字の幅を小さくできるけど、それが出来ない」。

 チケットも前売りという発想がない。昨年、横浜FC香港のスポンサーが集客に協力するため前売りチケットを買おうと協会を訪れると、“前日までにチケットを買いに来たのは初めてだ”と言われたという。「当日行けば買えるから、前売りの必要がないんです」。

 横浜FC香港では試合後、サインや記念撮影を求めるサポーターに選手が最後まで対応するようにしている。最初はそこでもひと悶着があった。「協会のスタッフが来て、“もう(スタジアムを)閉めるから早く帰れ”と言ってきた。あと15分待ってくれと言っていたのに、吉武の肩を持って引き離そうとしたんです」。

 これには太田氏も我慢ならず、責任者を呼び出して“これはおかしい”とクレームを入れた。話し合いの末、以後30分は待ってもらえるようになったが、「それからは延長分の運営スタッフの費用が乗っけられていた」。

 スタジアムでグッズを売ろうにも、売り上げの25%を協会(政府)に納めなければならない。試合以外のイベントなども協会の許可が要る。テレビの放映権料に関しては、クラブがリーグに“支払っている”状態だ。

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