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香川真司 10年前

香川真司がピッチから消えた? 世界最高、極限のフィジカルなフットボール

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

“速くて強くて上手い”選手たちが見せるプレーの応酬

 ハーフタイムを挟んで、マンチェスター・ユナイテッドの士気が高まっていた。トッテナムの気迫に危機感を抱いたモイーズが、選手を鼓舞したことは間違いなかった。

 2度目の45分が始まってから、記者席からわずか5~6メートル先のピッチでは、まさしく電撃的な試合が展開された。それは単なるたとえではない。目の前のサイドライン上でルーニーとデンベレがボールを奪い合った時、腰あたりの浮き球に対する両者の動きは、その瞬間、まるで高圧電流を流されたかのような強烈な速さを見せた。

 本当にこのレベルの選手は超人的だと思った。両者がボールの位置を一瞬で見極め、そこにものすごいスピードで体を入れてくる。ほんの少しだけボールに近かったデンベレが、突進力を生かして腰でトラップしようとしたその瞬間、ルーニーが膝下だけを居合い抜きのような速さで振って、そのボールをサイドラインから押し出した。

 これがプレミアだ。トップスピードで全力を出し尽くすプレーの応酬。これこそ速くて強くて上手い、特別な選手達だけが到達できる領域だ。

 この試合のピッチ上に香川もいた。しかし、試合開始直後から、187センチのサンドロが覆い被さるように香川に張り付き、文字通りその存在を消した。

 巨漢な上、ブラジル人らしい身のこなしを見せる始末におえないボランチ。強くて速くてしなやかなサンドロが、本気で香川をつぶしにきた。

 この試合で、レバークーゼン戦を分析したビラス・ボアスが、ブラジル代表MFに徹底的な指示を与えたとしても不思議ではない。「あの小さな日本人に好きなようにさせるな」と。

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