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香川真司 10年前

香川真司がピッチから消えた? 世界最高、極限のフィジカルなフットボール

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

トッテナムの気迫に消された香川

 後半、両軍がまたも1点ずつ取り合った。トッテナムの2点目は香川を消したサンドロが見事なミドルを放って奪った。

 一方マンチェスター・ユナイテッドはウェルベックがトッテナムPA内でGKとの接触プレーで飛んで、PKを奪った。ファン・ペルシーがいない今、当然のようにルーニーがPKを蹴り、再び同点にした。

 香川はそんな白熱した試合の中、後半39分までピッチに残っていた。ところが、ほぼフル出場を果たしたというのに、ヤングと交代してダッグアウトに引き上げる時、その表情には満足感は微塵も表れず、悔しさだけがにじんでいた。

 レバークーゼン戦に続くトップ下起用。しかも相手はプレミアの強豪チーム。昨季はトッテナムとのホーム戦でゴールも決めている。この試合での結果は喉から手が出るほど欲しかったに違いない。

 ところが、監督の気迫がそのまま乗り移ったトッテナムにその存在感そのものさえ消されてしまった。

 試合が終わって、12月のロンドンの寒風が吹きすさぶ、ダッグアウト前に設けられた屋外のミックスゾーンで香川を待った。しかし日本代表MFは日本人記者団の前に姿を現すことはなかった。

 いつもなら、先発した試合で結果もドローであれば、まず記者との対応に応じる香川だが、この日は言葉を残さず、チームバスに乗り込んだ。その無言の対応にも結果が残せなかった悔しさが伝わって来るような気がした。

 しかし、これが世界最高のフィジカルなフットボールなのである。肉体的な速さも強さもあり、技術も高いプレミア上位のクラブ同士でなければ繰り広げることができない、極限のフットボール。昨季の香川はこの極限を十分には体験していない。

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