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連載コラム 10年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第7回 未知への挑戦

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

退場という最悪の形に…

 すでに一度イエローカードをもらっていた荒井が、カウンターから相手の浅い最終ラインの裏に抜ける。抜群のスピードが売りの荒井が相手選手と絡みながらも体一つ前に出る形となったが、必死に戻る選手の足と半歩前に出る荒井の足が前後で交錯し、倒れた。これがシミュレーションと判定され、2枚目のイエローカードで退場という最悪の形となってしまった。

 ハーフタイムでは不自然に感じた理由が判明する。

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第7回 未知への挑戦
【写真:©VONDS市原】

 左サイドバックで先発させた道口が実は開始5分で腿裏に違和感を感じていたようで、それが左サイドのバタつきに影響していた。相手選手が抜群にいい動きをしていたわけではないのになぜあれだけやられてしまうのか? それが不思議でならなかったが、ピッチ上に居る選手が自分の身体の状態に不安や違和感を覚えながらプレーしている時は、やはりその不安は試合の流れ、展開に大きく影響を与えるものだ。

 そういった事は自分も現役時代に何度も経験していた。痛みを誤魔化しながら、Jリーグのピッチに立ったことは何度もあったが、拮抗した試合であればあるほど、それは最後の最後で勝敗を分ける。ピッチ上に立つ11人の肉体とメンタルが勝負だけに向いている時は、試合の流れを引き寄せるもの。

 その点においてこの日のVONDSの前半は不充分であったことは事実だった。道口は大事をとって前半だけで交代をさせた。

 後半序盤、CKから一度はじいたボールを自陣エリアで奪われ、クロスを上げられる。はじいたボールがペナルティエリアの外に転がるとそこから素晴らしいミドルシュートを決められ、1-2となってしまう。いつもなら、当たり前のようにクリアするボールもこのような展開の時には裏目となって出てしまう。

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