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連載コラム 10年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第7回 未知への挑戦

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

6月16日 On the pitch 第11節 ACアルマレッザ戦

 関東リーグ2部第11節 対ACアルマレッザ戦(アウェー)。

 完全に追い込まれた状況になっていた。この時点で浦安は無敗の独走状態。2位争いをしている横浜猛蹴に敗れたことで、昇格に向けては黄色信号となっていた。

 この試合の選手起用で最も悩んだのは左のサイドバック。前節で道口が負傷してしまったため、経験のある右の小田切を左にまわすか器用にどこでもこなさせる鈴木、開幕でスタメンだった西山などの起用も考えていたが、セカンドチームでずっと良い動きをしていた渡邉の存在が気になっていた。

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第7回 未知への挑戦
【写真:©VONDS市原】

 サイドバック出身である自分は、後方からのビルディングアップには一つのこだわりがある。現代サッカーでは前向きにボールを扱える選手は最終ラインの4人だけで、この4人がいかにいい角度にボールを置いて、どこにそのボールをパスを含め運んでいくか。それが有利にゲームを進めていく上で重要な要素になると考えている。

 左サイドバックには極力左利きでボール扱いのうまい選手を置きたいと考えていた。

 しかしながら渡邉は今季開幕前から膝の靭帯を怪我をしていて、ずっとリハビリをしていた。プレーに復帰したのは2月からで、トップチームに登録をしたばかりであった。

 窮地に追い込まれた中、スタッフとも色々意見交換したが、渡邉の起用には慎重な声が多かった。しかし練習でのパフォーマンスが明らかに良いのは事実だった。ひとつだけ計算ができなかったのが、昨年の彼のプレーを知らないこと。経験がない選手ということはわかっていたので、不安要素とすれば、公式戦、しかもこの失敗できない状況に呑まれてしまうのではないかということだけだった。

 渡邉には試合直前に多くの声をかけた。これが一つの大きなチャンスであること。パフォーマンスは良いという事実。長所である前方にボールを出すために勇気持って、良い角度にボールを置いてプレーを選ぶこと、オーバーラップをして攻撃に多く関わる事を強く要求した。前向きな失敗はOKであることをしっかり伝えグランドに送り出した。

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