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香川真司 10年前

モイーズ監督は認めていないが――。香川トップ下起用がマンUの低迷を打破する理由

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

接着剤のような役割を果たした香川

 最近のマンチェスター・ユナイテッドは、3連敗中ということもあったが、金属疲労でも起こしているかのように、攻撃が固くひび割れていた。

 パスが全くつながらなかった。とくに「ファイナル・サード」と呼ばれる、相手陣営3分の1の危険エリアでボールが回らない。

 それは速さと強さだけでごり押しするパワープレーに偏っていたからだろう。「ゴールが奪えない」「試合に勝てない」、そんな思いが当然焦りにつながり、さらに力づくのプレーになって連携を欠いた。

 そうした金属疲労を、香川がトップ下に入ることで見事に和らげた。日本のNO.10が、攻撃陣の接着剤のような役割になった。固くひび割れていた連携に、弾力あるしなやかなグルーを流し込んだかのように、香川が攻撃陣をきめ細やかにサポートしたことで、ボールがマンチェスター・ユナイテッド選手の足元におさまりはじめ、相手陣営で回り始めた。

 柔と剛の融合。今のマンチェスター・ユナイテッドにもっとも足りなかった「柔」を香川がもたらしたのだ。

 ただし今回も、後一歩のところまで迫ったが、日本代表MFに結果はついてこなかった。

 まずは後半21分、ゴール前に飛び込んだスモーリングの足元へ、これ以上はない見事なピンポイントクロスを放ったが、この絶好のボールをイングランド代表DFがふかしてバー越え。ゴール前3メートルの位置だっただけに信じられないシーンとなった。

 コーナーキックからの流れだったので最前線に残っていたわけだが、このクロスの行き先がディフェンダーだったのもツキがない。これで1アシストが消えた。

 また後半31分には、カウンターから、最前線に抜け出した香川にラファエルがきっちりスルーパスを送った。最後のDFを交わして、GKの手元をすりぬけるシュートを放ったが、最後にバランスを崩してボールに勢いなく、駆け戻った相手MFブリットンが、このシュートをきっちりゴールライン上でクリアして、またしても得点はならず。これで今季初ゴールも幻と消えた。

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