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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。ネイマールの才能はいかにして磨かれたのか?(その3)

ブラジルからは優れた選手が山のように出てくる。競技人口も多いが、才能の取りこぼしも少ない。そしてその中からネイマールのような宝石も“発見”される。ブラジルではいかにして才能に磨きをかけるのか? ネイマールの源泉であるサントスを訪ねた。

「十代前半の少年で最も気をつけなければならないのは親よ」

――貧困の中に埋もれて生活し続けるか、フッチボールをするか、ぼくには二つの選択肢しかなかったんだよ。

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。ネイマールの才能はいかにして磨かれたのか?(その3)
サントスFC下部組織ソーシャルワーカーのシウバナ・トレビサン【写真:田崎健太】

 ブラジルのサッカー選手からこれまで何度この言葉を聞いてきたことだろうか。

 もちろん、古くはソクラテス、最近ではカカのような中産階級以上出身選手は存在している。しかし、その数は限られている。経済発展が進んだとはいえ、ブラジルでは未だに多くの人間が貧困の泥の中で生活している。サッカーはそこを抜け出す最短の手段なのだ。

 だからこそ、サッカーの才能を持った少年は家族からの重圧を背負うこともある。

「十代前半の少年で最も気をつけなければならないのは親よ」

 というのは、サントスFCの下部組織で子どもたちの精神的なサポートをしている、ソーシャルワーカーのシウバナ・トレビサンである。

「サントスの下部組織に合格したことに喜んで、家、土地、全てを売って家族ごとこの街に引っ越してくる親がいる。自分の子どもが、ネイマール、ガンソ、ロビーニョになれると浮き足だってしまう。この街に来ても仕事は見つからない。何もやることがなくてぶらぶらしている」

 トレビサンは苦笑いした。

「私たちはネイマールをこのクラブから出したことを誇りに思っている。ただ、ネイマールに引きずられて、自分を見失ってしまう親や子どもが多い」

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