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本田圭佑 10年前

効いていた右サイドでの動き。セードルフ監督が本田をトップ下に置かない戦術的な理由

text by 神尾光臣 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

本田にパスが回らない理由

 ミハイロビッチは、10人のフィールドプレイヤーに厳しく守備のタスクを割り振る監督である。ミランの右に自由を与えすぎたと彼は見たのだ。そしてこれは戦術的に、本田の小さな手柄でもあったわけだ。

 後半にもショートコーナーから、得点のアクションにも絡んでいる。本田のパフォーマンスは、同じ右サイドで出場しながら仕掛けや前へのパス出しも出来なかった、前節のボローニャ戦よりもはるかにポジティブなものとなった。

 ただ、釈然としないものは残る。本人はスペースに良く動き、守備も懸命にやっていたのだが、まだまだパスを付けられていない。中盤でフリーとなった彼を見て、必ずパスを出してくれるのは最後尾のザッカルドぐらいしかいなかった。

 まだまだ本田はチームに溶け込んでいない、全員意地悪だ――などという陰謀論をここで働かせるのはやめておく。だが、周囲の選手から動きをまだ見てもらえていないという現実はあるわけで、ここに途中から入ってきた選手が機能する難しさがある。

 効率の良いパス回しやビルドアップのためには、出し手と受け手に動きの共通理解が必要となる。このようなものは本来、プレシーズンの段階から練り上げて行くべきもので、例えばインテルのマッツァーリ監督などは少々マニアックなまでにパターンを叩き込む。

 その一方で本田の場合は、彼自身も新天地に慣れる必要があるところに加え、チーム自体もセードルフ新監督のもと、ほぼ手探りに近い形で連係を構築し直している最中だ。

 サンプドリア戦ではカカーの温存とバロテッリの故障欠場、それに伴うパッツィーニとサポナーラの起用で、足元にボールをつなごうとする固執が『結果的』に減り、ようやくスペースへの展開が可能になったという段階である。

 そういう状況下では、フリーの本田に安定してパスを出してくれるのが、最後尾で広い視野が取れるCBのザッカルドぐらいであったことにも不思議はない。

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