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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。謎の企業“トラフィック”はサッカーの敵か、味方か(その2)

ブラジルのサッカーは明暗がはっきりしている。ピッチ上で熱狂が続く一方で、裏側では不正な金が飛び交い、時に選手たちも権力者も犠牲になる。そんなビジネス面に新興勢力が登場した。トラフィックという企業だ。ロナウジーニョの移籍で一躍有名になったこの企業は一体何をしているのか? 現地でその正体に迫った。

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール text by 田崎健太 photo by Kenta Tazaki , Kenzaburo Matsuoka

「私たちの戦略はサッカークラブを上手く運営していくことではない」

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。謎の企業“トラフィック”はサッカーの敵か、味方か(その2)
DBの副会長アレッサンドロ・パサロ【写真:田崎健太】

 トラフィックの法律部門を統轄するラファエル・ケイロス・ボテーリョはデスポルチーボ・ブラジル(DB)がトップチームに注力しない理由をこう説明した。

「トップチームを運営するには、スポンサーを集め、入場券を売らなければならない。当然、クラブはスポンサー、サポーターの期待に応える必要がある。一部リーグにはすでに強豪チームが多数存在している。その中で新しいチームが参加すれば、必ず赤字になる。

 私たちの戦略はサッカークラブを上手く運営していくことではなく、サッカー選手の才能を伸ばす場所を作ることだ。選手を育てて、欧州のクラブで活躍させる。あるいはコリンチャンスやサンパウロFCに移籍させてリーグで勝つ。それが我々の望みなんだ」

 DBでは15才でまず「育成契約」を締結。そして16才でプロ契約を結び、18才から20才の間に他のクラブへ売却する――。DBが保有権を持ったままレンタル移籍をすることもある。

 DBの副会長、アレッサンドロ・パサロにはクラブの会議室で話を聞いた。

 パサロを含めて、ブラジルのサッカー界では非常に珍しいことではあるのだが、トラフィック中核の人間は英語を話す。パサロはサッカー選手の経験はない。2年前から顧問弁護士としてトラフィックで働き、副会長を兼ねるようになったという。

「DBはサンパウロ州を中心にブラジル全土から、14、15才の才能ある選手を集めている。彼らはここで寮生活し、街の学校へ通う。学校まではチームのバスで送り迎えしている。もちろん寮費は無料だ。

 その他、月に約100ドル程度のお小遣いを渡している。小遣いの中でやりくりすることで、金銭感覚を養うという意味もある」

 DBはブラジル全土から選手を集めている。

「DBには約40人のスカウトがいる。12才程度選手を中心に情報を集め、約二年間追い続ける。これはと思った選手は週末を利用してテストする。毎年20人程度の選手を獲るんだ」

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