「私たちの戦略はサッカークラブを上手く運営していくことではない」
トラフィックの法律部門を統轄するラファエル・ケイロス・ボテーリョはデスポルチーボ・ブラジル(DB)がトップチームに注力しない理由をこう説明した。
「トップチームを運営するには、スポンサーを集め、入場券を売らなければならない。当然、クラブはスポンサー、サポーターの期待に応える必要がある。一部リーグにはすでに強豪チームが多数存在している。その中で新しいチームが参加すれば、必ず赤字になる。
私たちの戦略はサッカークラブを上手く運営していくことではなく、サッカー選手の才能を伸ばす場所を作ることだ。選手を育てて、欧州のクラブで活躍させる。あるいはコリンチャンスやサンパウロFCに移籍させてリーグで勝つ。それが我々の望みなんだ」
DBでは15才でまず「育成契約」を締結。そして16才でプロ契約を結び、18才から20才の間に他のクラブへ売却する――。DBが保有権を持ったままレンタル移籍をすることもある。
DBの副会長、アレッサンドロ・パサロにはクラブの会議室で話を聞いた。
パサロを含めて、ブラジルのサッカー界では非常に珍しいことではあるのだが、トラフィック中核の人間は英語を話す。パサロはサッカー選手の経験はない。2年前から顧問弁護士としてトラフィックで働き、副会長を兼ねるようになったという。
「DBはサンパウロ州を中心にブラジル全土から、14、15才の才能ある選手を集めている。彼らはここで寮生活し、街の学校へ通う。学校まではチームのバスで送り迎えしている。もちろん寮費は無料だ。
その他、月に約100ドル程度のお小遣いを渡している。小遣いの中でやりくりすることで、金銭感覚を養うという意味もある」
DBはブラジル全土から選手を集めている。
「DBには約40人のスカウトがいる。12才程度選手を中心に情報を集め、約二年間追い続ける。これはと思った選手は週末を利用してテストする。毎年20人程度の選手を獲るんだ」