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日本代表 10年前

遠藤保仁の“切り札”起用の原点を探る。灼熱の中東で見せた攻撃センスの真骨頂と冷静な試合コントロール

text by 元川悦子 photo by Asuka Kudo / Football Channel

細貝の投入。遠藤は自然と前へ

 内田篤人と香川真司が負傷離脱し、代わって酒井宏樹と清武弘嗣が先発する形で始まったこの試合。日本は相手の凄まじいロングボール攻撃に押される格好となった。素早いリスタートからの攻めも多用し、日本守備陣は脅かされる。それでも前半20分に長友佑都の左クロスからファーサイドを走りこんだ清武が先制。幸先のいいスタートを切った。

 しかし1-0で折り返した後半、日本はギアが上がらず追加点を奪えない。そこでザック監督は前田遼一に代えて酒井高徳を投入。長友を左MFに上げ、本田を1トップ、岡崎慎司を右MF、清武2列目中央に置く形へと変更した。

 だが選手たちの疲労は時間の経過とともに濃くなる。大歓声を背にしたオマーンの方が逆に勢いづき、残り15分を切ったところでFKから同点弾を叩き込んだ。こうなると相手も俄然、勝利への意欲が高まる。日本は押し込まれ、逆転の危機にさらされる。

 そこで指揮官が採ったのが、残り6分のところで清武を下げ、細貝萌を入れるという奇策だった。細貝がボランチに陣取れば、遠藤は当然のごとく前へ上がる。事実上のトップ下の位置でプレーし、積極果敢にゴールを狙いに行く。

 それが結実したのが、残り1分の岡崎の決勝点だった。左サイドを駆け上がった酒井高徳の折り返しを前線に上がった遠藤がワンタッチ。ファーサイドから詰めた岡崎が押し込んで、日本は敵地での苦戦を制するとともに、ブラジル本大会切符獲得に王手をかけることに成功した。

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