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アジア 10年前

アーノルド前監督、成績不振は明らかだが――。豪州では依然“名将”の評価、解任した仙台への批判も

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu , Getty Images

若すぎる死。そして同国の名将が解任

 その後、大掛かりな手術や過酷な抗がん剤治療を乗り越え、トンビデスは一旦はガンを「克服」、プロ・フットボーラーの一線に復帰する。さらには、2012年9月、ウェスト・ハムのトップチームの一員としてリーグ1カップに出場するまでの快復を見せる。

 今年1月にはAFC・U-22選手権に臨むオリルーズ(豪州U-23代表)に19歳ながら選出され、主力として日本戦を含む4試合に出場したばかりだった。その大会後に病状が急速に悪化、3月8日の20歳の誕生日を病院で迎えたおよそ1ヵ月後、ついに帰らぬ人となってしまった。

 ディラン・トンビデス、惜しまれながらこの世を去った未来のサッカルーの冥福を心から祈りたい。

 トンビデスの悲報の10日ほど前には、残念な報せも日本から届いた。4月9日に発表されたJ1仙台のオーストラリア人監督のグラアム・アーノルド退任のニュースがそれだ。

 アーノルドが指揮を執った公式戦(リーグ、ナビスコ杯)の成績は、8試合0勝3分け5敗、8試合で得点わずか3という散々たるもの。これでは、どうにもフォローが難しく、クラブとして退任を求めるという姿勢も当然だろう。おそらく、日本のサッカー世論の大半も同じ考えだったことは想像に難くない。

 しかし、豪州での捉え方はかなり違った。このニュースに接した豪州国内のサッカーコミュニティのリアクションには、若干の動揺が見て取れた。準国営放送SBSのサッカー専門ポータルサイト「ザ・ワールド・ゲーム」は、“独占”と銘打った退任直後のアーノルドが心境を吐露する記事が掲載された。

 そのコメント欄には「アーニー(アーノルドの愛称)でも通用しないのか……」「6試合で解任って、それがアーニーほどの監督に対する仕打ちかよ」など、ファンの動揺と共に仙台の対応に批判的なコメントが目立った。

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