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日本代表 10年前

今なお記憶に刻まれる2010年ワールドカップ南アフリカ大会。熱く波乱万丈だった日本代表の軌跡

text by 藤江直人 photo by Getty Images

大久保が明かした“言い合い”の重要性

 世界で戦うために、を合言葉として2008年5月から継続してきた「4‐2‐3‐1布陣」を大会直前になって撤回。全体が自陣に下がってブロックを形成し、粘り強く守りながら乾坤一擲のカウンターに活路を見出す。W杯直前でスタイルを根本から180度変えた岡田監督の采配を、間近で見ていた日本サッカー協会の原博実技術委員長はこう振り返っている。

「岡田さんはむしろ勝負師だったと思う」

 もちろん、システム変更が奏功しても、実際にピッチの上でプレーする選手たちが心をひとつにしなければ結果を勝ち取ることはできない。どん底に落ちた中で全員が危機感を共有し、一致団結していった軌跡が、ポジションを失った俊輔の胸をも打っていたのだろう。

 思いをぶつけ合うことの重要さを、大久保はこんな言葉で表現したことがある。

「言い合いみたいなものがないと、一人ひとりが自分に対して責任感を持つことなんでできないですよね。人に対して何かを言えば、その分、オレもやらなきゃいけないとなりますから」

 一か八かの戦術変更と選手たちに芽生えた自立心との相乗効果に導かれた快進撃はしかし、決勝トーナメント1回戦で急停止を余儀なくされた。同じく堅守速攻を伝統とするパラグアイ代表の老獪な試合運びの前に、延長戦を含めた120分間を通じてゴールを奪えず、PK戦の末に無念の敗退を味わわされた。

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