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日本代表 10年前

今なお記憶に刻まれる2010年ワールドカップ南アフリカ大会。熱く波乱万丈だった日本代表の軌跡

text by 藤江直人 photo by Getty Images

チームに衝撃が走った岡田武史監督の進退伺い

今なお記憶に刻まれる2010年6月の記憶。W杯南アフリカ大会、熱く波乱万丈だった日本代表の軌跡
岡田武史監督【写真:Getty Images】

 日本代表で10番を背負った先輩の悪い予感は、早々に的中してしまう。W杯の代表発表を経て、韓国代表を埼玉スタジアムに迎えた5月24日の壮行試合で、日本代表は0対2と完膚なきまでに叩きのめされる。精彩と存在感とを欠き、後半18分にFW森本貴幸(当時カターニア)との交代でベンチへ下がった俊輔へ、サポーターから容赦ないブーイングが浴びせられた。

 永遠のライバル韓国に、2月の東アジア選手権に続く完敗を喫した。試合後の記者会見では、岡田監督が発したこの言葉に場内が騒然とした。

「1年に2回も韓国に負けて本当に申し訳ないと思っていますし、当然、責任問題も言われると思います。ただ、犬飼会長に問いただして……いや、尋ねてみましたが『やれ』ということだったので、前へ進むしかないと思っております」

 口頭とはいえ、W杯開幕を直前に控えた段階で指揮官が進退を伺ったことを自ら明かしたのだ。チームが動揺しないはずがない。韓国戦の3日前にキャプテンに指名され、チームを再浮上させるきっかけを必死に探っていたGK川口能活(ジュビロ磐田)が絶句したのも無理はなかった。

 チームを覆った重苦しい空気は、高地順応を目的としたスイス・ザースフェでの直前キャンプでも消え去らない。イングランド代表に1対2、コートジボワール代表には0対2とテストマッチで連敗を喫した日本代表は、もはや万策が尽きたようにも映った。

 しかし、低空飛行を強いられたチームは、川口の呼びかけで選手だけの自主ミーティングを幾度となく開催していた。

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