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名波浩が回想する98年W杯。初出場への重圧と歓喜の狭間。「下手くそで弱かったけど色は好きでした」

text by 原田大輔 photo by Kenzaburo Matsuoka , Getty Images

カズ落選で「浮き足立っていた」チーム。その真意は?

――特に予選を戦う中で、ドーハ組の思いや過去の悔しさを実感していただけに、さらに思いは強くなったのでは?

「鮮明に覚えているわけじゃないんですけど、メンバー落ちした後のカズさんの会見を、誰かに聞いたのか、映像を見せてもらったのかで知って、その中でカズさんが『魂は向こうに置いてきた』と言っていて、こんなことなかなか言えないと思ったし、それをさらっと言えてしまうのが、カズさんなんだなって感じた。

 カズさんのW杯への思いは人一倍強かったと思うし、世界一うまい選手になりたくて、単身ブラジルに渡り、W杯に出るために日本に帰国したという流れも知っていただけに、同じ静岡県人としても気落ちは分かるというか……その無念さというのを我々が背負わなければいけないって強く感じましたよね」

――その後、チームの雰囲気は?

「もしかしたら、その後1週間くらいは浮き足立っていたかもしれない。でも、それは決して悪い意味じゃなくて、身が引き締まる思いじゃないけど、決意を新たにしたという意味で。オレたちでやらなきゃいけない。岡田さんの期待っていうのはそういう意味合いがあるんだぞって、それぞれが感じたはず」

――大会直前に、岡田監督は4バックから3バックにシステム変更を決断していますが、その背景は?

「個人的には3バックでも4バックでも役割は変わらなかった。自分たちの力を理解した上で守備的に戦おうって腹を括っていたから、自分としては奪ったボールを失わないようにプレーすることとか、特にファーストプレーでミスをしないことを心がけなければって思っていた。

 それに3バックになり、守備時は5バックのような状態になることもあって、4バックの時よりも自分が横にスライドする距離や回数が減ることもありました。それこそ先日、井原(正巳)さんの家で、素さん(山口素弘)とかとメシを食べた時に、この話になったんですけど、W杯直前にメキシコとユーゴスラビアと非公開のテストマッチをやったんですね。

 その時の出来が、内容的にもよすぎて、『これ、やれるっていう手応えを感じちゃったよね』って話してたんですよ。これは本番でも『はまるだろう』って。でも、実際は3-5-2でも相手にマークを剥がされてしまったんですけどね」

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