名波浩が回想する98年W杯。初出場への重圧と歓喜の狭間。「下手くそで弱かったけど色は好きでした」
2014年06月09日(月)11時40分配信
初戦のキックオフ直前に中田英寿が掛けてきた言葉
――実際にW杯のピッチに立った時、どんな感覚でしたか?
「ユーゴスラビアやクロアチアともキリンカップで戦っていたし、強い相手とかでも名前負けしたり、ふわふわと浮き足立ったりというのはないだろうとは思ってた。初戦のアルゼンチンにしても、やっぱり強いだろうなとは思っていたけど、それは決してネガティブな意味ではなく、相手をリスペクトした上での感覚で。
個人的には試合にはリラックスして臨めたし、普段どおりのプレーもできていた。だから、そんなに後悔は残っていないんですよね。強いて言えば、第3戦のジャマイカ戦で、いわゆるおいしいボールが転がってきたのに、ふかしちゃったことが、悔やまれる。ただ、その時の自分ができる最高のプレーはできた。それで負けたんだから、日本は弱い。オレは下手くそなんだって認識でしたよね。終わってみたらですけどね(笑)」
――3試合の中で特に覚えていることはありますか?
「そうそう。初戦のアルゼンチン戦でピッチに立ち、円陣を組んで、『行くぞ』って広がった時に、ヒデが『ナナ』って言って寄ってきたんですよね。それで、オレも『どうした?』って近づいていったら、『この中で普段どおりプレーできるヤツって何人いるかな?』って、ぼそっと言う。それを聞いた瞬間に、試合がキックオフされたんですけど、同時にこいつ観点が違うな。すごいこと言うなって思ったのを覚えてますね」
――第1戦のアルゼンチン戦で感じた世界との差とは?
「この間、柔道家の野村忠宏さんが柔道着の襟を掴んで組んだ瞬間に『こいつ強いな』というのが分かるって言ってたんですけど、まさにそれと同じ感覚でしたね。入場してピッチに並んだ時に『強いな』というのが感覚的に思ったんですよね」