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「歴史はふたたび動き出した」。98年の再現なるか? 采配光るデシャン監督のもと、南ア大会の悪夢消し去るフランス

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

「いまのチームが南アフリカの悪夢を消し去ってくれる」

 サポーターの声には「俺たちは世界のサッカー界の恥さらし者だった。だけど、いまはシンボル的な存在になりつつある!」

「みんながひとつにまとまっているのを感じる。いまのチームが南アフリカの悪夢を消し去ってくれる。このチームなら、もっと先…決勝までも行けるかもしれない!」

「また新たな夢を見させてくれそう。ほんの数ヶ月前までは、誰かがスタッド・ド・フランスにフランス代表の試合を見に行こう、と誘っても、みんな断っていた」というものが多かったが、やはり南アフリカ大会は相当なトラウマだったのだろう。

 大会中も練習ボイコット事件などで世間を騒がせたが、そもそも本戦出場を決めたプレーオフのアイルランド戦でもティエリ・アンリの「ハンドアシスト」なる失態があり、始まる前から嫌な空気に覆われていたのだ。

「選手たちはみな、ともにプレーするのを楽しんでいる。今のチームは、ただひたすらに汗をかき、ゴールを決める。内輪もめもない」とファンたちが語るこのシンプルな姿こそが、人々が待ち望んでいたレ・ブルー像であり、今大会ではそれが蘇った。

 パリジャン紙のドミニク・セベラック記者も「世界の8強の一角に入り、優勝のチャンスさえ出てきた。しかしそれはモンスター級のビッグチャンスではない。ささやかなチャンスだ」と描写しているように、いまのレ・ブルーは、どう見ても強豪で『誰でもかかって来い!』的な強さを持ったチームではない。

 選手一人ひとりの自信や才覚を積み重ねて、苦戦しながらも勝利を手に入れる、そんな「個」よりも「和」のチームだ。観る者も、試合を通してそれを実感できるからこそ、心を動かされているのだろう。

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