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Jリーグ 10年前

Jリーグ恒例の“退団セレモニー”は必要か? 柿谷バーゼル移籍で泣き叫ぶファン、煽るクラブ。まるでSMAPのコンサート

text by ショーン・キャロル photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

観客にとって試合は二の次。本当に重要なのは試合を戦う選手たち

 柿谷を“傍観”しにきた人々にとって、フィールド上で繰り広げられる全てのことは二の次だったようだ。チームが1-2とビハンドを背負いながら、南野が怒りを爆発させて退場したことも同様。残り7分間プレーするために背番号8が準備を始めれば、1万6000人の観客は喜びで奇声を上げていた。

 “曜一朗! 曜一朗!”と、私の後ろの席の人は興奮しすぎと言える状態で叫び続け、カメラ付き携帯電話を探していた。そして、その2分後に柿谷が試合に登場した際にはヨダレを垂らして喜んでいた。

 最終的な試合の敗北さえ、ムードを弱めるものとはならなかった。そして、柿谷は“義務的”な涙ながらのスピーチ(光るピンクのマイクで!)を行い、花束を受け取り、ファンからの声援を浴びるためにピッチを一周した。

 この喧噪には、川崎Fファンも何人か含まれていた。私は、Jリーグの行儀の良いスタイルには大賛成だ。しかし、これらは例外である。ピンクの商品を持つフロンターレサポーターの光景は実に滑稽だった。

 私は、クラブに貢献した人物に感謝を示し、次のステップへ進むことを祝福することは大賛成だ。しかし、“フェスティバル”にするほどドラマチックである必要はない。

 サッカー選手が新しいクラブへ移籍することは、SMAPのコンサートやディズニーのパレードと同様ではない。(これらのイベントでも10歳以上でありながら、悲鳴や叫び声を挙げている人々は自分自身を見つめ直す必要があるが…)

 新しい活躍の場があることに感謝し、彼が健康であれば良いと願って送り出して欲しい。本当に重要な選手は、来週の試合であなたのために一列に並ぶ選手たちなのだから。

【了】

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