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ドイツ5部ヴッパータールSV、小さなモノレールの街にも息づくフットボール。街の人々は時間を重ねてクラブに愛着

text by 本田千尋 photo by Getty Images , Chihiro Honda

レバークーゼンとのテストマッチにも穏やかな雰囲気

ドイツ5部ヴッパータールSV、小さなモノレールの街にも息づくフットボール。街の人々は時間を重ねてクラブに愛着
28分にようやく、キースリンクが先制ゴールを上げる【写真:Getty Images】

 5部のチームが、1部に所属し欧州チャンピオンズリーグも戦うようなクラブを迎え撃つ格好となった訳だが、テストマッチと言うこともあって、何より5部と1部の開きもあり、ヴッパータールの人たちは穏やかに観戦した。

 3部に所属した07-08シーズン、ヴッパータールSVはドイツ・カップでベスト16にまで駒を進め、バイエルン・ミュンヘンと戦ったこともある。

 シャルケの本拠地ヴェルティンス・アレーナに61482人を集めてドイツ王者を迎え撃ったが、やはり2-5のスコアで敗戦している。しかし集まった人の数と2-5というスコアを見れば、チームを含めてヴッパータールの人たちは戦ったのだ。

 レバークーゼンとのテストマッチでは3479人の観衆が集まった。ギスギスしたところはどこにもない。文字通り開き直っていたのは、ゴール裏の4~50人ほどの集団だけである。リーダーとおぼしき赤い短パンに上半身は裸の男が盛んに煽っていたが、それでもどこか呑気なものだった。

「さあ、行こうぜ! ロート・ブラウ(赤と青:ヴッパータールのチームカラー)!」という威勢のいい場内アナウンスで始まった試合は、レバークーゼンが一方的に押し続けるハーフコート・マッチとなった。

 ワントップにキースリンク、U-19欧州王者ブラントと韓国代表ソンの両翼に、ハンブルガーSVから新加入したチャルハノールをトップ下に据えた強力な攻撃陣が、ヴッパータールSVを自陣へと釘付けにした。

 その光景はレバークーゼンのファンを含めて誰にとっても予想通りだったのだろう。圧倒的な劣勢だったが、ちょっとしたお祭りの雰囲気は変わらない。

 しかしピッチ上で、ヴッパータールSVは粘った。28分にようやく、キースリンクが先制ゴールを上げる。

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