既成事実化していった代表復帰。誇張されていく報道…
とはいえ、2月の右足負傷から強引に復帰してブラジルで戦ったダメージは大きく、内田は今季ブンデスリーガ開幕の8月末になってもピッチに立てない状態だった。体が自由に動かなければ、代表のことなど考える余裕はなかったはずだ。
9月23日のヴェルダー・ブレーメン戦でようやく復帰し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)にも出場するようになったことで、周囲は「内田はいつ代表復帰するのか」と騒がしくなったが、本人はあくまでも慎重な姿勢を崩さなかった。
しかしながら、日本代表が10月2連戦でブラジルに0-4の大敗を喫したあたりから、内田の再招集待望論が高まりを見せてきた。霜田正浩技術委員長がドイツに渡って本人と会談したことなども報じられ、11月2連戦での代表復帰が既成事実化していった。
「自分はW杯が終わってから代表のことは喋っていないのに…」と内田が苦言を呈したのは、自分自身がしっかりとした決断を下す前に、外堀が固められていったことに納得いかなかったからではないだろうか。
実際、アギーレ監督も日本サッカー協会も内田には代表に戻ってきてほしいと考えていたのは確かだし、我々メディアの大半もそうだった。
CL決勝トーナメントに毎年のように出ている際立った国際経験、攻守両面での安定したパフォーマンスなどを踏まえても、彼が日本の右サイドバックのトップであることは紛れもない事実だからだ。
大きな期待を本人も十分理解していたはずだが、彼は自分で考え判断することに重きを置く人間。その重要な決断に至る前に、話がどんどん大きくなったことに戸惑いを隠せなかったのだろう。
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