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類を見ないポルトガル人監督によるCL。勝ち残った“マディラの真珠”は富豪の舌を唸らせるか

text by 齋藤祐太 photo by Getty Images

金満クラブの危機を救った無名監督

類を見ないポルトガル人監督によるCL。勝ち残った“マディラの真珠”は富豪の舌を唸らせるか
モナコはジャルディンのもと危機的状況を脱した【写真:Getty Images】

 ロシア人富豪のドミトリー・ライボロフレフ氏によって買収されたモナコは、パリ・サンジェルマンの成功を模倣するかのように、積極的な補強を進めた。ポルトガルリーグ出身であるハメス・ロドリゲスやジョアン・モウティーニョ、ラダメル・ファルカオらスーパースターたちと大型契約を結び、世界を驚かせた。

 監督にも大金を注ぐことを厭わず、ラニエリという名監督を切ってまで触手を伸ばしたのが、監督就任前年にはリーグ7位とくすぶっていたスポルティングを、昨季就任1年目で2位へと躍進させたジャルディンであった。 革新的な補強を進め、フランスリーグの王者を目指すモナコが、実績のある名監督を差し置いて、当時世界的には無名であったポルトガル人監督を招聘したのである。これには世界中のサッカーファンが首をかしげたことだろう。

 疑問は的中した。ジャルディン新監督に率いられたモナコは、王者を目指すどころか、ロリアンとの開幕戦を1-2で敗れ、スタートダッシュに失敗。続く第2節のボルドー戦や、第5節のリヨン戦など、優勝争いのライバルたちにもことごとく敗北し、早速解任の危機に立たされた。チームの目玉であるファルカオやハメスを失った代償は巨大すぎたとの声が世間を出回った。

 この危機的状況からチームを救った実力が、ジャルディンがモナコの監督に招聘された所以であろう。ベルバトフやジョアン・モウティーニョらベテラン選手を主軸に、勢いとスピード感のある若手選手を育成してチームに融合させた。若手の育成と中堅の抜擢、ハイラインによるプレッシング、素早いサイド攻撃に、フィジカルの強いフォワードに頼った強引な打開策などといった特徴は、ジャルディンがスポルティング時代から発揮してきたアイデンティティーである。

 ブラジルワールドカップでアルジェリア代表のエースストライカーとして大活躍を遂げたイスラム・スリマニや、アルゼンチン代表の準優勝に貢献して大会ベストイレブンにも選ばれ、後にマンチェスター・ユナイテッドへ移籍したマルコス・ロホ。現在スポルティングの主軸として活躍し、ポルトガル代表にも選出されているセドリック・ソアレスやアドリエン・シウバらは、ジャルディンが重宝した若手・中堅の選手たちである。

 若手や中堅の選手を大胆に抜擢し、攻撃的なサッカーを信奉する青年監督。これが監督レオナルド・ジャルディンの正体だ。

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