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ドルトムント新監督は“研究者”。ペップ+クロップ=トゥヘル。新戦術と香川の相性は?

text by 本田千尋 photo by Getty Images

香川の新たな可能性を拓くか

 それでは戦術面でクロップとは正反対の指揮官がBVBにやってくるのかというと、そういう訳でもない。

 シュピーゲル電子版は、トゥヘルがペップから「ボール・ポゼッションに基づいた試合方法」を学び取ったことと、それに加えて「速さ」と「柔軟性」も嗜好していることを記している。

 例えば岡崎慎司がワントップに抜擢されたマインツ時代のサッカーを振り返ってみると、ペップ・バイエルンのスタイルと似ているとは言い難い。

 なぜならトゥヘルがペップから一番感銘を受けたのは、ロスト時の守備、だったからである。ショートパスを繋ぐというスタイルではなく、ボールを奪われた瞬間に奪い返すための守備組織の構築と、それを可能にする規律と献身性――。

 シュピーゲル電子版は、トゥヘルとペップの“オープンな密会”で始まる記事の見出しを「新しいBVBの指揮官トゥヘル:グアルディオラとクロップの間」としている。

 つまりBVBはトゥヘルが指揮を執ることによって、「ゲーゲンプレッシング」というクロップの基本を踏襲しながらも、「ボール・ポゼッションに基づいた試合方法」もある程度取り入れていくのではないだろうか。

 トゥヘルの招聘は、引いた相手に悩まされ続けた今季に対する、一つの解決策という意味合いもあるのだろう。トゥヘルのドルトムントは、現在ルシアン・ファブレの率いるボルシアMGに近いものとなるのではないだろうか。

 こうして考えてみると、香川との相性は、決して悪いものではない。クロップから学んだことを基にして、トゥヘルの戦術を上手く消化出来れば、「新しいBVB」でも十分にチャンスはあるはずだ。

 また日本代表のチームメイトである岡崎から、事前にトゥヘルについての情報を仕入れることが出来るのは大きいと言える。

 岡崎をワントップに抜擢したように、トゥヘルは、香川の新しい可能性を拓くのかもしれない。

【了】

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