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Jリーグ 9年前

Jリーグは本当に“拡大均衡”状態なのか? 経営状態の実態とクラブ経営者の憂鬱

text by 藤江直人 photo by Getty Images

荒業をやってのけた神戸、苦しい鳥栖

Jリーグは本当に“拡大均衡”状態なのか? 経営状態の実態とクラブ経営者の憂鬱
ヴィッセルの代表取締役会長である三木谷浩史氏(楽天株式会社代表取締役兼社長)【写真:Getty Images】

 債務超過と3期連続赤字の両方を抱えていたヴィッセルは、営業利益だけを見れば4億8300万円の赤字だった。この状態のままならばJ3以下のカテゴリーへの降格を余儀なくされたが、22億5000万円もの特別利益を計上して当期純利益はJ1でトップに浮上した。

 債務超過をも同時に解消させた荒業は、ヴィッセルの代表取締役会長である三木谷浩史氏(楽天株式会社代表取締役兼社長)の存在と密接にリンクしてくる。Jクラブのなかでヴィッセルが例外的な存在であることを、Jリーグ幹部から聞いたことがある。

「ヴィッセルさんの場合は、言い方は変なんですけど、そもそも黒字とか赤字にあまりこだわっていない経営をしている。成り立ち自体が市民クラブとは違うというか、足りないお金に対してはお財布がある、ということだと思います」

 お財布とはイコール、三木谷氏のポケットマネーを指す。実際、ヴィッセルは2007年シーズンにも三木谷氏の支援で28億7000万円の債務超過を解消させている。結果としてリスクとほぼ無縁となるチーム経営は、Jリーグ側が求めている姿とは対極にあると言っていい。

 2013年度よりも6100万円多い3億6000万円の赤字を計上したサガンは、2015年度決算で赤字となればJ3以下への降格となる。2013年度で2億700万円に膨らんでいた債務超過は、2度に及ぶ増資で何とか回避させた。今年度は3億円の営業収益増を掲げて、黒字経営への転換を図る。

 サガンの竹原稔社長は、収益増の柱をスポンサーの拡大に求めると明言している。今シーズンから2ステージ制を再び導入して、露出と収入の増加を見込んでいるJ1において、残念ながら入場料収入の大幅アップは望めない状況となっている。

 第12節を終えた時点での入場者数は、前年比102%とほぼ横ばい状態に甘んじている。こうした状況を踏まえれば、サガン以外に2014年度で赤字を計上したベガルタ仙台(1億700万円)、ヴァンフォーレ(7400万円)、セレッソ大阪(9000万円)は、今年度において積極的な施策を打てなくなる。

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