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日本代表 9年前

惨敗の中で見えたハリル流。時期尚早な結果批判、問われる代表批評のあり方

text by 河治良幸 photo by Getty Images

ハリルホジッチの志向とは?

 この時、起点のパスを出した武藤は中盤に残っていたが、川又、宇佐美、永井の3人は丹羽のクロスに合わせられる様にペナルティエリアまで走り込んでいた。そうしたクロスに対してゴール前に人数をかける意識はザッケローニ時代に不足していたもので、アギーレ時代には改善が見られたが、注目したいのは左からの攻撃に対して中でポイントを作り、さらに逆サイドに展開したところからクロスに3人が飛び込むという迫力を実現していたことだ。

 アギーレは半年間の指導で引き出しを全て披露していたわけではないが、中盤でのボールロストを最も嫌がることもあり、これだけ速い流れで左、中、右の3エリアを使ったオープン攻撃はパターンに組み込まれていなかった。ザッケローニは速い攻撃は同サイドで完結し、ワイドな攻撃はDFラインを使ったポゼッションを織り交ぜていた。

 どの攻撃スタイルが優れているかという比較論ではないが、ハリルホジッチの基本志向がより刹那な時間でのダイナミズムを求めるスタイルであり、攻守の切り替わりと直後の素早いコンビネーションからチャンスが生まれやすい状況を想定している。中国戦は90分を通して高いアベレージを実現していたが、特に先制点が決まった前後の時間帯はブラジルW杯でハリルホジッチが率いたアルジェリアを思い起こさせるものがあった。

 その意味では運動量や機動力がそれほど落ちなかったとはいえ、後半に大雨が降り、両チームのパスレンジが伸びて大味な試合になったのは少し残念だった。ただ、こうした攻守の流れを相手と環境になるべく左右されず、なるべく長い時間で実現できる様になれば、チームのパフォーマンスは確実にアップするはずだ。

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