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Jリーグ 9年前

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く

湘南ベルマーレが存在感を増している。22日の川崎フロンターレ戦では開始早々に失点しながら、時間の経過とともに前への推進力を強めて逆転勝ちを収め、セカンドステージで4位タイに浮上した。J1残留どころか、年間総合順位でも上位を狙える快進撃の源泉を探っていくと、チョウ・キジェ監督と選手たちを結ぶ固い絆と、掲げてきた「湘南スタイル」が目指す究極のゴールが見えてくる。

text by 藤江直人 photo by Getty Images

川崎F戦、開始早々の失点に謝罪する指揮官

七転び八起き。苦しみつつ前を向く湘南。“監督じゃない感じ”チョウ監督との絆が選手を成長に導く
湘南ベルマーレのチョウ・キジェ監督【写真:Getty Images】

 劇的な逆転勝利の余韻が残る試合終了直後のロッカールーム。満足感と充実感を同居させている選手たちに対して、ベルマーレのチョウ監督はいきなり頭を下げた。

 前半のキックオフからわずか15秒で、フロンターレのFW大久保嘉人に決められた先制ゴール。すべては自分に責任があると、チョウ監督は詫びた。

「僕はまったく喜べないから、お前たちだけで喜んでいい。お前たちは今日、選手の力だけで勝った。監督のミステイクを上回るパフォーマンスを出したことに対しては、何も言うことはない。僕は僕でしっかりと反省したい」

 指揮官が笑顔を封印したのはなぜなのか。ベルマーレのキックオフで始まった一戦。ハーフウェイライン上にはいつものように、ベルマーレの選手が7人も並んでいる。主審のホイッスルとともに前方へ押し出されたボールを、さらに前へ運んでいく。J2を制した昨シーズンから実践してきた、「湘南スタイル」をいきなり全開にする“儀式”がこの日は一変していた。

 FW菊地俊介が軽く前へ蹴り出したボールを、キャプテンのMF永木亮太は左後方にいるDF三竿雄斗へ下げている。チョウ監督が意図を明かす。

「今日はヨシ(藤田祥史)を使っているので、ボールを下げてから逆サイドのヨシの頭を狙わせて、そこから攻めていこうと考えていた」

 利き足の左足からの正確無比なキックを武器とする三竿に、ロングパスを対角線で蹴らせる。5試合ぶりに先発したワントップの藤田祥がキックオフに関わらず、右サイドにいたのは奇襲を仕掛けるためだった。

 数日前から思い描いていた青写真は、しかし、三竿のミスキックとともに暗転する。必要以上に力んでしまったのか。三竿のパスはフロンターレのFW杉本健勇の真正面へ飛んでしまう。前線に人数を割いていたベルマーレは、当然ながら守備陣形が整っていない。杉本から左サイドにいた大久保、そして杉本と流れるようにパスがつながっていく。

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