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Jリーグ 8年前

磐田・名波浩監督の意図ある“主力外し”。青年監督率いるサックスブルーの成長曲線

text by 青木務 photo by Getty Images

勝ちきれなかった大宮戦、ドローという選択を排除した新潟戦

 J1残留を第一目標に定め、磐田はシーズンを戦っている。開幕戦こそ名古屋グランパスに0-1で敗れ黒星発進となったものの、その後は5試合負けなしを維持している。とはいえ、残留に向けたライバルとの2連戦は勝ち点3がほしい試合だった。特に大宮戦はこれまでの試合で最も攻撃のカラーを出せたこともあり、勝ち越しゴールを奪えなかったことが悔やまれる。テクニカルエリアから大声を出し続け、喉を潰した名波浩監督は試合後、ガラガラの声でこう語った。

「昨年2試合引き分けて、今回も引き分けましたが、この3試合の中では一番内容は良かった。選手たちには開口一番、『勝ち点2を失ったゲームだ』と言いました」

 この試合で先制点を奪った小林祐希は「(浦和、柏、福岡、大宮戦の)4試合負けていないことをどう捉えるかは選手個人個人で色々あると思うけど、俺は3試合勝てていないことがもどかしい。勝ち点3に執着したい」と言って唇を噛んだ。

 少しずつ、自分たちの思い描くサッカーを表現できるようにはなってきた。だからこそ、自信をさらに深めるためにも勝利を掴む必要があった。

 新潟戦に向け、磐田は試合2日前に新潟入りしている。昨年から移動に時間のかかる遠方アウェイの時はこうした措置をとってきた名波監督。前日練習を現地のグラウンドで行い、万全の準備を整えて試合当日を迎えた。

「勝ち点3かゼロだ」

 名波監督は選手たちに向け、この一戦の持つ意味を端的に伝えている。もちろん、簡単に勝てるチームなどJ1には存在せず、昇格1年目のチームが引き分け狙いで手堅く勝ち点1を持ち帰れるほど甘くもない。勝利のみを目指すことで切り開ける道がある。だからこそ指揮官は、強い口調で“白か黒”しかないことを選手たちに告げたのだ。

 2つのPKで逆転勝利し、勝ち点3を手にした。新潟の自滅ともとれる試合であり、PKが複数回与えられたことをラッキーだったと捉えることもできる。しかし、勝ちは勝ちである。試合前の準備を含め、選手たちの闘志に火をつけた青年監督の勝利でもあった。

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