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Jリーグ 8年前

磐田・名波浩監督の意図ある“主力外し”。青年監督率いるサックスブルーの成長曲線

text by 青木務 photo by Getty Images

今後はリーグ制覇を目標に掲げる強豪との対戦が待ち受ける

 たとえば、新潟戦でフル出場した山本はナビスコカップや途中出場のリーグ戦で着実に仕事を遂行しており、名波監督の評価も高かった。宮崎を左SBに移すことで空いたボランチの一角に“たなぼた”的に入ったわけでは決してない。効果的なサイドチェンジや強烈なミドルシュート、そして素早いスライドによる相手のパスコースの限定など、攻守において高い能力を発揮したからこそスタメンに名を連ねることができたのだ。

J1復帰初年度の磐田が生き残っていくためには、チームとしての総合力が鍵を握る。控え組だった選手がリーグ戦のピッチで輝けば主力に危機感が芽生え、それがチームの底上げにも繋がっていく。名波監督は言う。

「ここからが茨の道というか、厳しい戦いが待っている。カップ戦も含めた連戦の中で色々な選手が試合を経験できると思う。そうした空気に触れることによってJ1の厳しさを感じてほしい」

 今後はリーグ制覇を目標に掲げる強豪との対戦が待ち受ける。「内容と結果の全てで相手を上回る試合はまだできていない。より上を目指すためにはもっと内容を良くしていきたい」と上田が言うように、改善すべき点はある。毎試合ゴールを奪われ、攻撃面でもジェイと2枚看板として期待されたアダイウトンがいまだ無得点なのは気になるところで、上位チームは一瞬の綻びも見逃さないだろう。負けなしが続く現状や一桁順位に惑わされてはいけない。磐田はまだ、何も成し遂げていない。

 それでも、J1における彼らの成長曲線は少しずつだが確実に上昇している。そして、まだまだ向上する余地が残っていることはむしろ、今後に期待を抱かせる。第一到達点として定める残留ライン『勝ち点40』まで、あと31ポイント。「茨の道」の先にある光はまだ小さいが、確実に視界に捉えている。

(取材・文:青木務)

【了】

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