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Jリーグ 8年前

【英国人の視点】ついに浦和が手にした勝者のメンタリティ。アジア王者・広州撃破につながった“勝てるサッカー”

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

「浦和を見に来てもらえるような勝てるサッカーをしたい」(槙野)

槙野智章
槙野智章【写真:Getty Images】

 全員が一人のために、一人が全員のためにというこの精神は、パフォーマンスにも明らかに表れていた。選手たちは競り合いに体を投げ出し、ルーズボールを追いかけ、リードを守ろうとしてもおかしくはない試合終了間際になっても攻め続けていた。

 ペトロヴィッチ監督はしばしば、彼のチームには相手の息の根を止めてしまうような容赦の無さが足りないと不満を述べている。その点では、選手たちが見せたこの日の戦いぶりに間違いなく満足しているはずだ。2点目を奪うことはできなかったとしても、ゴールを求めて前からプレスをかけ続けることは決して止めなかった。

 相手やこの試合に対する恐れを抱いてもいなかった。ある場面では、広州のルイス・フェリペ・スコラーリ監督が堂々たる体躯を用いて審判に威圧感を与えようとしていたところで、槙野智章がブラジル人指揮官と何らかの言葉を交していたような様子もあった。より強大でより厳しい相手との戦いは、レッズにとってむしろ向いているようだ。選手たちはこの機会を楽しんでおり、気を引き締めて勝利を目指していると感じられた。

「ファンの皆さんが見に来てくれて、結果も出し続けることができるような良いサッカーをしたいと僕らは思っています」と槙野は、レッズが勝ち点3を手に入れた試合後に話していた。

「はっきり言えば、今日はアジア王者である広州や相手の選手たちを見たいと思ってここに来た人たちもいるはずだと思います。相手を見に来るのではなく、浦和のサッカー、浦和の選手たちを見に来てもらえるような勝てるサッカーをしたいというのが僕らの目標です」

 もう春だとはいえ冷え込んでいたこの夜に3万人の観客の前で見せられたようなレベルを、今後のシーズンが熱さを増していく中でも維持していくことができれば、その目標は十分に達成することができそうだ。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【了】

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