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Jリーグ 8年前

フォルランがセレッソで伝えたかった“サクリフィシオ”。父から教えられた「犠牲心」【フットボールと言葉】

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲 photo by Getty Images

不振に陥っていたセレッソ大阪

 私が初めて、WOWOWスタッフと共にインタビューのためにセレッソ大阪を訪ねたのは9月、それは残暑厳しい日だった。練習後、フォルランの車に同乗し撮影。さらに自宅でインタビューすることになった。

 セレッソから彼の運転するレンジローバーに乗り込んだ。私が後部座席から質問して、助手席からカメラマンが撮ることになった。ところが走り出して、すぐに渋滞にはまり、フォルランは少しイライラし始めた。

「半年間、いつも車で通っているけれど、こんな渋滞は初めてだ」と言い出した。さらに冗談らしく少し笑いながら「こんな目に遭わされるのは君たちのせいだ」と言った。

 フォルランは自宅で待つ奥さんが気になるのか、携帯や時計を見たりして、次第に落ち着かなくなった。車内は重い雰囲気となり、話も途切れがちになってしまった。

 自宅に着いたのは昼食時間もはるかに過ぎていた。早朝からの練習で、お腹も空かしているはずだったので、できれば満たされた気持ちでインタビューに臨んでもらいたいと思い、よかったら先に食事をすませたらどうかと提案したが、インタビューを終えてから、ゆっくりと食べると言うことだった。

 自宅で行われた初めてのインタビューは、正直に言って、あまりいいものではなかった。フォルラン自身、あまり気持ちも乗っていなかった。チームの状況も芳しくなかったことも原因かもしれなかった。

 開幕時に監督だったポポヴィッチは解任され、あらたにペッツァイオリ監督が就任していたが、ワールドカップによる休止後7月に再開されたJリーグは、第19節を終了しセレッソはまだ勝利がなく15位と順位を落としていた。

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