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Jリーグ 8年前

統計学で見るJリーグ・2ステージ制の矛盾。確率が導き出した歪なバランスと制度設計の問題点

text by 山下祐司 photo by Asuka Kudo / Football Channel , Getty Images

現行制度は2ステージ制と呼べるものなのか?

モデルに基づくシミュレーション結果
図:モデルに基づくシミュレーション結果

「過去のデータを照らし合わせても、使えるのは22シーズンぶんの結果だけです。サンプル数が少ないため、データとしての信頼性は不十分です。J1リーグに参加するチーム数も変わってきました。実際に現行制度のCSが行われたのは1回だけ。統計的な結論は出せません。しかし、コンピューター上でのシミュレーションなら10万シーズンも数十分で可能です」(小中准教授)

 実際の2013年の勝点、順位とシミュレーションした2013年の勝点、順位を比較したのが表(モデルに基づくシミュレーション結果)になる。

 分析結果からみえてきたのは年間勝点で3位までに入る強い3チームが1stと2ndステージも制する確率が非常に高いこと。そのため、1stと2ndステージの優勝チームが年間勝点で重複せずにCSに進出できるときは、各ステージの優勝チームがまるでワイルドカードでCSに出場したようにみえる。

 ワイルドカードとはメジャーリーグで採用されている制度で、大げさにいえば各地区を優勝せずにポストシーズンに進出できる「特別枠」のようなものだ。小中准教授はこう説明する。

「確率的に、おおむね年間勝点の上位3チームがCSを争う現行の制度を2ステージ制と呼ぶには乖離が大きい。これは、現行の2ステージ制を前提にしたCSに問題があるということです。各ステージの優勝チームと年間勝点の上位チームをCSで争わせるのは、別々の指標で評価したチームを戦わせていて、一貫性に欠けています」

 とはいえ、こうも考えられないだろうか。2ステージ制がそれこそスポンサー収入と観客数の増加を目的としているので、その目的を達成しつつ年間勝点が高いチームがCSのタイトルをより獲得しやすい制度設計を、Jリーグがあえて「選んでいる」のではないか。

 まさに今年の変更点はリーグ戦成績上位チームの優位の一貫性を確保することを“目的”としてCSのシード順位で年間勝点2、3位のチームが各ステージ優勝チームより優遇されるようになった。しかし、「目的達成の利点と、年間勝点の上位3チームと各ステージ優勝を並立させる方式が生み出す問題とが、うまくバランスがとれているようにはみえません」と小中准教授は話す。

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