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Jリーグ 8年前

統計学で見るJリーグ・2ステージ制の矛盾。確率が導き出した歪なバランスと制度設計の問題点

text by 山下祐司 photo by Asuka Kudo / Football Channel , Getty Images

年間勝点4位以下でステージ優勝したチームがCS制覇する確率は6.8%

「特に各ステージの優勝チームはタイトルの獲得を表彰されますが、年間勝点が1位のチームはCS決勝で負けてしまうとタイトルを手にできない。メジャーリーグはポストシーズン制を確かに採用していますが、年間勝点1位のようなチームをしっかりとタイトルチームとして認めています。この差も大きい」

 今年もシーズン終盤になると2ndステージ優勝の行方と年間勝点を計算してどのチームがCSに出場するのか話題になるだろう。しかし、そのCSが実は、2ステージ制の影響は大きくはなく、まるで1シーズン制の上位3チームによるCSになる確率が【61.7%】だと知ったらファンはどう思うだろうか。

 小中准教授は「私が選ぶなら通年制。各ステージ優勝チームの有利にする2ステージ制をへてCSを実施してややこしくするより、シンプルに年間勝点1位のチームをたたえたい。ただ、ポストシーズンの盛り上がりも素晴らしいものなので、採用されるのであれば矛盾無くすっきりした制度設計を期待します」と語る。

 ちなみに論文での記載はないが、小中准教授が同じ方法を用いてリーグ戦ではなくCSを新たに分析したところ、年間勝点1位、2位、3位のチームがCSを制する確率はそれぞれ【52.0%】、【21.6%】、【19.5%】だった。3位までに入れず、ステージ優勝で出場したチームがCSを制する確率は【6.8%】だった。

 小中准教授たちの分析から、現行の2ステージ制の「内実」が具体的な数値で明らかになった。望んでいたのは「年間勝点で4位以下のチームをステージ優勝で救済」し、年間優勝チームを争う制度だったのか。

 制度変更のたびに問われているのは1シーズンを通した勝者である年間勝点1位の「価値」だ。この「価値」をスポンサー収入と集客と交換可能と考えるなら、現在のCSを含めた2ステージ制に執拗にこだわるのではなく、別の制度設計を考えてもいいのではないだろうか。

(取材・文:山下祐司)
※記事内の図、表は泉武志、小中英嗣が「J1リーグ2ステージ+ポストシーズン制度の統計的分析」をもとに作製

プロフィール
小中英嗣(こなかえいじ)
名古屋大学大学院博士後期課程電子情報学専攻修了。工学博士。名城大学理工学部准教授。専門分野はシステム理論、制御理論(特に、ハイブリッドシステム論とその応用)。

【了】

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