フットボールチャンネル

「人間の生き方は、仕事に取り組む姿勢と同じにしかなり得ない」。闘将シメオネのフットボール観【後編】

シリーズ:闘将シメオネのフットボール観 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

「人間の生き方は、仕事に取り組む姿勢と同じにしかなり得ない」

S フットボールに取り組む子供がいる父親には、子供に対して競争に臨む心構えをさせてほしい。競争とはフットボールだけでなく、人生のことだ。子供には人生に立ち向かう準備をさせなくてはならない。

 多くの人間が「家にいる自分と、フットボールや仕事に取り組む自分は違う」と話すが、それは嘘、嘘でしかないよ。人間の生き方は、仕事に取り組む姿勢と同じにしかなり得ない。仕事で気高さを持った人間はプライベートでも気高く、苛立っている人間はどんなときも苛立ち、働き者は働き者、裏切り者は裏切り者、エゴイストはエゴイスト、そして前に進んでいく人間はどんなときも前進を止めないんだ。

ハビエル・マタジャナス(スペインのスポーツ新聞アスの副編集長)の兄弟(カルロス・マタジャナス、筋萎縮性側索硬化症=ALSを患いながら記者、選手として活動)が記した文書を読んだが、衝撃を受けたよ。

~アス、「ALSと闘う選手」より抜粋~

 私はALSを患いながらここにいる。しかし記者、選手という違う自分にも忠実でなければならない。

 嘆き悲しむこと、ほかの人間を羨むことによって、時間を無駄になどしない。周囲からは、「そのような強い意志がどこから湧き出るのか?」「なぜ不平を言わないのか?」と問いかけられる。そのような質問への答えは、いつも同じ。

 フットボールだ。

 フットボールは努力の大切さを教えてくれた。良くも悪くも、予期しないことが一瞬で起こるものと示したのもフットボールだった。

 試合は最後まで終わらない。命が続く限り、希望は存在し続ける。

~抜粋終わり~

S 今季のコパのオスピタレ戦前、飛行機に乗っていたときにその記事を読んだが、心が震えた。だからページを破って、選手たちにも読んでもらったんだ。どこの新聞かは忘れたが、その16ページ目を引きちぎってキャプテンのガビに手渡し、「ガビ、これを読め。全員に読んでほしい」と言ったよ。これこそ人生だ。フットボールがフットボールだけにとどまることはない。人生そのものなんだよ。

(翻訳・編集:江間慎一郎)

【了】

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top