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「人間の生き方は、仕事に取り組む姿勢と同じにしかなり得ない」。闘将シメオネのフットボール観【後編】

シリーズ:闘将シメオネのフットボール観 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

フットボールには全員の居場所がある

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シメオネの息子、ジオバニは2015年のU-20ワールドカップでアルゼンチン代表の9番を背負った【写真:Getty Images】

M 最終的に、どうやって説き伏せられたの?

S あらゆる手段によって、移籍を促されたよ……。ただ、その後には起こり得る中でも最高の出来事が待っていた。4年間滞在したローマで、ラツィオのファンからは素晴らしいもてなしを受けたし、26年ぶりのリーグ優勝も達成できたからね。

M 隣に座っている君の長男ジオバニは、これからスダメリカーノ(南米ユース選手権)に臨むわけだけど。

S 彼らにとっては最も重要な時期だ。スダメリカーノはワールドカップへの第一歩となるからね。スダメリカーノでプレーした若手の内、5、6、7選手は次のワールドカップに出場するはずだ。うまくいくことを願っているよ。現在のチームには競争力があるし、素晴らしいことを成し遂げるチャンスがある。

M ジオバニ、君は代表でもリーベル・プレートと同じく、9番の役割を背負うんだよね?

ジオバニ・シメオネ そうだね。ペナルティーエリア内がプレー範囲だ。

G 彼のプレーをよく見ると、DFの後方で本当に良い動きを見せているよ。

S グスタボの言うように、私が彼について評価しているのは、マークを外す動きだ。アルゼンチンは個人技が強調され、そのようなプレーが有効になるからね。だがストライカーはボールありきで、ゴールに背を向けたプレーやペナルティーエリア内で起こり得るすべての出来事に素早く対応しなくてはならない。

 まあ、私は息子たちに対して、「フットボールはフットボールであり、どこでプレーするかにこだわりは持つな」と言い続けてきた。しなければならないのは、出場のための準備だけだよ。「君の個性は好きじゃない」と言い放つ監督もいれば、反対に「君のような選手は大歓迎だ」と話す監督だっている。

 フットボールは漠然としたもので、「監督から好かれるから良い選手」「監督が言う通り自分は悪い選手」と決めつけて思考を狭めてはいけない。フットボールはフットボールで、そこには全員の居場所がある。だから懸命に働かなくてはならず、そうすることで、いつの日かチャンスが訪れるはずだ。

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