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日本代表 8年前

【西部の目】ハリルJ、7-2の試合で見えた収穫と課題。主力抜きでの破壊力と“20年遅れ”の守備戦術

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

レベルの高さを見せた崩しのアクション

 日本にはスピードがある。ただし、ロングカウンターを成功させるには馬力不足で、ショートカウンターのほうが威力を発揮できる。その点で、守備時に引きすぎないことが攻守の良い循環を作るのに有利なのは確かであり、ハイライン+コンパクトを基調にできれば理想的だ。これで完成だと困るけれども、スタートラインとしては悪くない。

 攻撃では素晴らしいアクションがいくつもあった。

 1点目。サイドチェンジで相手のラインを下げさせてから、いったんボールを下げ、相手のラインをフリーズさせておいて岡崎が裏へ、柏木からパーフェクトなパス。ブルガリアのクロス対応に難はあっても、レベルの高い相手にも使える崩し方だった。

 2点目。相手が縦に並んだ間を通して柏木へ。このパスが効いている。柏木のサイドチェンジ、長友のクロス、香川のヘディングとこちらも完璧な流れ。

 5点目。ニアゾーン(SBとCBの間)を酒井が狙い、続けて酒井と入れ替わるように清武が飛び出してニアゾーンを攻略。形としては清武と金崎のワンツーだが、連続でニアゾーンへの飛び出しを行った。外で相手を引きつけて中へパス、そしてニアゾーンという経路も理想的。

 6点目。柏木から、MFとDFの「間」で待っていた清武へ。清武の「間受け」でCBが釣り出され、CBをカバーするためにSBが絞る。これで外がガラ空き、酒井の走り込みとクロスから宇佐美がゲット。ブルガリアの守備ブロックの手前でボールを持っていた柏木に対してFWが全く守らず、フリーにし続けていたことを差し引いても、間受け→サイドという定石ルートはレベルに関係なく有効。

 本田を欠き、香川を前半で失い、岡崎がいなくなっても、これだけ崩せて点がとれるなら、アジア予選には十分だろう。ワールドカップ本大会を考えると、攻撃のキーマンである柏木を起用するかどうかも含めて再構築が必要になるかもしれないが、予選突破のための準備は整っている。

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