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EURO2016 8年前

EURO開催国フランスのいま。テロへの警戒。厳戒態勢下でもファンゾーン設置の意義【現地レポート】

text by 小川由紀子 photo by Yukiko Ogawa

近隣住民からの不安の声

 5月下旬に調査会社が行ったアンケートでは、64%が『ファンゾーンの中止には反対』と答え、テロ直後に比べて人々の抵抗感は和らいだが、会場となるシャン・ド・マルス広場周辺の住人からは、やはり不安の声も挙がっている。

 このあたりは官公庁も多く、大使館員なども好んで住まうパリでもとくにシックな高級住宅地。つい先日も、エクスプレス紙が広場から遠くない場所にある小学校に子どもを迎えに来たママたちの声を拾っていた。

「いまパリは非常事態宣言下にあるのに、そんな中でこのような場所を設けるなんて信じられない」。(実際、非常事態宣言下に置かれている地で、このような国際的なサッカーイベントが開催されるのは史上初だそうだ)

「期間中、わたしたちの住むこの界隈は危険にさらされる」

「いつもとは状況が違う。こんな催しをするなんて、自分から頭をライオンの口に突っ込むようなもの」

 エッフェル塔では、毎年7月14日の革命記念日や大晦日などには打ち上げ花火など、イベントが行われている。サッカーイベントのファンゾーンも、2008年のEUROからここで開催されているから、近隣住人は「慣れっこ」であり、このエリアに住まうにあたって付随することだと「覚悟」はしている彼らだが、「今回ばかりは事情が違う」というのがママたちの声だ。

 セキュリティそのものへの不安だけでなく、警備上の理由で、会場周辺の道路は一定のルートを除いて封鎖されることになるから、いつもの道を通って自宅にもたどり着けない。夜中まで騒音は続くし、毎月高い料金を支払って自宅付近に停めている車も、期間中は5キロも離れた別の場所に動かさなければならないらしく、1ヶ月間日常生活に不便をこうむるご近所さんたちの憂いはもっともだ。

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