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Jリーグ 8年前

前田遼一、磐田戦での胸中。「感謝の気持ちしかない」。鳴り響いたジュビロ時代のチャント

text by 青木務

磐田サポーターの振る舞いを称賛した名波監督

ジュビロ磐田の名波浩監督
ジュビロ磐田の名波浩監督【写真:Getty Images】

 FC東京は守備陣形を整えて磐田に決定機を作らせなかった。名波浩監督も「失点しないというスタンスでやって失点しないのだから、守備の構築や戦術がしっかりしているということ」と話していた。

 ただ、それでは攻撃に人数をかけにくく、必然的に決定機の数も限定されてしまう。だが「そういう戦い方をしていても、チャンスは数少ない中でも必ずある。そういうところを決めるかどうかだと思う」と前田が言うように、自身の決定機も含めゴールの匂いは間違いなく磐田よりも強かった。にもかかわらず、スコアを動かすことはできなかった。

 前田にも昂ぶるものはあったはずだが、相手守備陣とのバトルはいつものこと。「そこでいかに自分のボールにできるか」が重要だと言う。それが十分にできなかったため、FC東京の背番号20は悔しさを滲ませたのだ。

 今いるチームのために、顔色一つ変えず冷静に戦うことのできる男は、スタンドから広がる光景を見て何を思っただろうか。

 試合開始前には万雷の拍手を送り、試合後にはチャントを歌って前田の“凱旋”を歓迎した磐田サポーター。この日に向けては名波監督が「温かく迎えてあげてほしい」と“お願い”を表明していたが、恐らく彼らは指揮官の言葉を聞かずとも、かつてのエースを笑顔で迎えると決めていたはずだ。

 名波監督も、サポーターの振る舞いを称賛している。

「やはり一流のクラブというのは一流のサポーター、一流のフロントと三位一体でないとどうしても常に優勝争いはできないと思うんですけど、今日のサポーターの声掛け、声の大きさやリズムも非常に良かったと思いますし、15年もクラブのために身を粉にして働いてくれた人間に対しての敬意ある素晴らしい態度だったなと思います」

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