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Jリーグ 8年前

フォルランの“サクリフィシオ”。ウルグアイ代表でもセレッソでも大事にしてきた姿勢【フットボールと言葉】

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲 photo by Getty Images

出場機会を減らしていたシーズン後半戦

 最近起用されなくなったことについても尋ねなければならなかった。監督から先発でないことに説明はあるのだろうか。

「時には説明してくれる。ただ最近僕が欠場しているのは、僕自身痛みを抱えていたり、いい練習ができなくて、先発で出られないときもあったんだ」

 来日以来8ヶ月の月日が経っていた。来日当初は希望に満ちていたはずだが、最近は失望を感じているのではないか。しかし質問ではごくシンプルに「日本での8ヶ月間を振り返り、どのように感じていますか」と尋ねてみると、「とてもいいよ。日本は美しい国だし、いいフットボールもされている。ここでプレーすることを僕はとても気にいっているんだ」と、やはり本音は話さなかった。

 セレッソの現状について、どのように考えているのかも気になった。

「たしかに僕らは今、とても難しい状態にある。残留を争っているわけだし、何とか降格圏から抜け出したいとがんばっている。僕がやれることは、これまでやってきた仕事、プロ意識とリスペクトをもって仕事を続けること、そしてサクリフィシオの教えを彼らに残すことなんだ」

 フォルランはここでも“サクリフィシオ”を口にしている。私はこの時点で、サクリフィシオとは、「フットボール以外の誘惑を断ち切り、フットボールに専念すること」と捉えていた。それが父パブロの教えであり、フォルラン自身も最も大切に考えて実践してきたことであった。

 11月29日WOWOWノンフィクションW「ディエゴ・フォルラン 日本へ伝える魂?スーパースターに託された夢」は放送された。それは奇しくも、セレッソが2部へ降格が決まった日でもあった。

 この日私は鹿島アントラーズとの試合を見るために大阪へ向かった。フォルランは試合に出るかどうか、分からなかった。それでもWOWOWの取材が終わっても追い続けたいと思っていたし、スタジアムへ行けば、彼に会うこともできるだろうと思ったからだ。フォルランがベンチ外であることは、梅田から長居へ向かう地下鉄の中で知った。

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