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Jリーグ 8年前

フォルランの“サクリフィシオ”。ウルグアイ代表でもセレッソでも大事にしてきた姿勢【フットボールと言葉】

シリーズ:フットボールと言葉 text by 竹澤哲 photo by Getty Images

母国メディアに激白した本音

 試合はセレッソが1対4で敗れた。この日は最終戦セレモニーが予定されていたため、試合後選手たちはピッチ中央に1列に並んだ。フォルランはスーツ姿で、スタンドのどこからともなく現れ、その列に並ぶと、なにやらカカウと話し始めた。

 セレッソの岡野社長がマイクの前に立ったとき、スタンドからはブーイングも起きた。

「市場最攻は経営だけ 大事な強化は空回り 20年間の経験を財産にできないクラブに花は咲くのか?」という横断幕も掲げられた。選手たちはスタンドを一周したが、この時フォルランに対してどのような言葉がかけられたのかは、メインスタンドの下にいた私には知ることはできなかった。

 激励するもの、非難するもの、両方の言葉が入り交じったものだったはずだ。日本語を完全には分からないフォルランの目には一体どのように映ったのだろうか。フォルラン自身は申し訳ないという気持ちで一杯だったろう。しかしその反面、ワールドカップ得点王をとった世界一流の選手が何かを伝えたいと思い、地球の裏側までやってきながらも、実力を十分に出せず、いや、その機会さえも与えられなかったことで、やはり悔しいという気持ちで一杯だったはずだ。

 ファンとしても、頭を垂れ挨拶する選手たちの屈辱的な姿をみなければならないのは、悲しかったはずだ。一周を終えてロッカールームへ向かうフォルランに一声はかけたが、しかしその日はそれ以上話す機会もなく、スタジアムを後にした。

 フォルランが悔しさを明らかにしたのは、それから、数日後のことだった。ウルグアイの『エル・オブセルバドール』というテレビ番組にフォルランがスカイプを通じて出演。40分間にわたり激白した。その動画が、ウルグアイのサイトにアップされ、それはすぐに日本でも反響を呼ぶことになった。フォルランのチーム批判と受け取り、センセーショナルに扱う一部のスポーツ紙もあった。

 たしかにフォルランは現地テレビアナウンサーの質問に対して本音ともとれることを隠さず話している。しかしその内容よりも、私自身がショックを受けたのは、彼があまりに饒舌であったことだ。たまりに貯まっていたことをはき出している。そんな印象さえ与えるものだった。

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