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EURO2016 8年前

フーリガン報道にまみれたEURO。ピッチ上の激戦を覆い隠した場外の暴動【現地レポート】

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

地元フランス人サポーターも関与か

 マルセイユでロシアとイングランドが対戦した日は、昼間から市街地で両国サポーターが衝突したあと、ヴェロドロームでの試合の最中にもぶつかりあい、報道もそのニュース一色だった。

 ピッチ上では選手たちが最後の一滴まで汗をしぼりとるような渾身のプレーを繰り広げているというのに、この事件から数日は、レキップ紙の電子版の「最も読まれている人気記事」の1位から5位まではすべてフーリガンの話題が埋めていた。主役は彼らではなく選手たちなのに、それはとても残念なことだ。

 読者も好んで暴力ネタを探して読んでいるわけではないと思うが、今回はとくに開催前から、この大会をターゲットにしたテロへの恐怖、セキュリティの問題などもあり、事件に対して敏感になっていた。それだから余計に、メディアも事件を大きく取り上げ、人々の関心を集めていたようなところもあった。

 実際、欧州の多くの国では、とくに昨年11月のパリ同時テロ事件以来、常にストレスにさらされている。テロへの警戒だったり、移民問題だったり、ふだんの日常生活をしていても、どこかで危険への警戒心をもっていなくてはならない、というのは想像以上にストレスになるものだ。

 マルセイユでのイングランドサポーターとロシアサポーターの衝突は、地元フランス人サポーターも関わっていたという情報もある。

 またその翌日、マルセイユから遠くないニースでも、ポーランドと北アイルランドのサポーターを巻き込んだ衝突があったが、これは地元のフランス人グループが襲撃したものだった。

 これなどは明らかな便乗行為。暴動に関与した人たちの中には、日頃のストレスが、きっかけを得たことで爆発してしまった人もいたのだろう。

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