フットボールチャンネル

EURO2016 8年前

スペインを破壊したイタリアの戦術プランとは? “コンテ・アズーリ”が魅せた予想外のスペクタクル

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

「イタリア=守備」にあらず。スペインは攻撃の共通理念が見られず

デル・ボスケ
敗れたスペイン代表のビセンテ・デル・ボスケ監督【写真:Getty Images】

 コンテの言う通り、このイタリアを守備のみのチームというのは正しくない。ベルギー戦、スウェーデン戦でも証明された通り、点を奪うための戦略と戦術的な仕組みがこのチームには約束事として備わっている。ピッチにいる味方とテンションを共有するベンチメンバーの一体感も含め、クラブチーム然とした完成度がイタリア最大の武器となっている。

「僕たちは練習を積んだことを試合で実行し、美しいサッカーを展開してすらいる。自分たちにはタレントがいない以上、チームとしてプレーのアイディアを持たなければならないわけで、その意味でコンテ監督は素晴らしい師範だ」。最終ラインを取りまとめたレオナルド・ボヌッチは語った。

 逆に、チームとしての攻撃の共通理念が見られなかったのがこの日のスペインだ。中盤の“フゴーネス(創造者たち)”の技量にものを言わせるのはいいが、ワンタッチのパス交換に必要なスペースを消されると威力は半減する。

 そして後方のビルドアップも妨げられている状況では、展開のスピードも上がらずただ余計に手数を増やすだけになった。攻撃で手詰まりを起こすのはチェコ戦でも見られた現象だが、この日は後方の守備陣もイタリアに攻略された。

 イタリアの守備の網を広げるアイディアにも欠けた。縦に行くのがアルバロ・モラタだけでは、ゴール前に攻め込むためのパスワークとして完結しない。また相手を横に押し広げるため両サイドバックを上がらせても、その裏のスペースを逆に使われて攻められるありさまだった。

「サイクルの終焉ではない」とビセンテ・デル・ボスケ監督は強弁した。確かに主力選手のピークアウトも絡んでいるだろうし、スタイルが時代遅れになったというのは乱暴な言い方だろう。しかし中盤でのインテンシティの低さと、人ではなくボールを動かすことに固執した現代表チームの有り様については、修正を迫られることになるのかもしれない。

(文:神尾光臣)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top