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EURO2016 8年前

ウェールズ、かく敗れたり。「3分の悪夢」もベイルに悔いなし。“ドラゴンズ”の夢は終わらず【東本貢司の眼識】

ウェールズ代表は、現地時間6日に行われたEURO準決勝でポルトガル代表と対戦。EURO初出場ながら躍進してきたウェールズだが、クリスティアーノ・ロナウドのゴールなどで0-2の敗戦を喫した。しかし、彼らは英雄として母国へと凱旋するはずだ。そして、“ドラゴンズ”(ウェールズ代表の愛称)の夢の続きはまだ終わっていない。(文:東本貢司)

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

主将ロナウドは“わくわく気分”? 前半に漂ったゆったり感

コールマン
ウェールズ代表のクリス・コールマン監督【写真:Getty Images】

 奇妙な違和感。いつになくあられもなくにこやかなクリスティアーノ。キックオフ前の儀式、挨拶とコイントスのシーンで、レフェリーがものした何事かに嫌に従順・殊勝に耳を傾け、うんうんと優等生よろしく何度も首を縦に振る。センターラインを挟んで向かい合うアシュリー・ウィリアムズは、それを見て呆気にとられたように棒立ちの体――。

 これは何かのブラフか。それとも、よくぞ(我々ポルトガルは)ここまで来れたものだと、素直に感激と感謝の念を精一杯、表したいだけだったのか。

 あえて好意的に深読み解釈してみると――「この場に今立っているのは、何よりもチームメイトのおかげ。キャプテンとして本当に誇らしい。それに、奇しくも“かけがえのない僚友”率いる今大会随一の話題のチームと戦える幸運、最高の舞台設定にわくわくドキドキしてるんです」!

 あゝ、決戦直前にしてこんなきらきらムードを醸し出す稀代のスーパースターなんて、かつていただろうか。無論、そんな、片時の晴れ晴れ友好気分にほだされる者などどこにもいない。ましてや、国のため、ファンのため、そして自分たちのためにも、悔いのない戦いを尽くすのみと、じっと炎を燃やしていたはずのウェルシュ・ドラゴンズの中には!

 意外なほど淡々と、ゆったりと漂い、たゆとう時のようなファーストハーフだった。時折弾ける小さな火花にも、われ関せずと黙々とボールを追い、その都度の行く末を見定め、チャンスの時を待つ両軍。監督コールマンが漏らした「夢の続きへ」を支えに、持前の研ぎ澄ました集散の粋を尽くすドラゴンズと、それをほぼ同じモードで無理なく受けて立つポルトガル――。

 試合が終わり、やってきた一つの結末を受け止めているその時にあっても、真っ先に、何よりも、その45分間の記憶が蘇り、それこそロナウドの“わくわく気分”にあやかって、あゝ、いいゲームだったじゃないか、と心穏やかに頷いている。

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