日本人選手のテクニックはなぜ世界で通用しないのか? スペインにおける「技術」の考え方

7月6日発売した『フットボール批評issue12』では、スペインで指導者として活躍する坪井健太郎氏(構成:小澤一郎氏)が6月のキリンカップ日本代表対ボスニア・ヘルツェゴビナを分析。日本人選手の『技術』を欧州と比較した。その一部を抜粋して掲載する。

2016年07月17日(Sun)9時09分配信

text by 坪井健太郎 photo Getty Images
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スペインと日本で異なる「技術」の定義

アンドレス・イニエスタ
イニエスタはインテンシティが高い局面でも的確な判断ができる【写真:Getty Images】

 まずは私が指導者ライセンスを取得し、指導現場に立っているスペインにおける「技術」の考え方から説明したいと思います。サッカーの進化に伴い定義も少しずつ変化していますが、スペインでは「技術の背景には必ず戦術的要素が含まれている」と認識されています。

 目に見える部分である「ボール扱い」はスペイン語で「Ejeccion(エヘクシオン)」と呼ばれ、それはあくまで「実行」の部分です。スペインでは戦術的要素の伴わないボール扱いの「実行」はあくまでエヘクシオンで「ボール扱い」と「技術」は別物です。

 目に見えない(頭・心)の認識・分析・決断を含めて「PAD+E」のプレープロセスがあり、その最後に現れる部分が「技術」と定義されています。スペインの育成年代での技術習得は「実戦で使えることが最終目的」とされていますので、相手がいる実戦的状況下でのトレーニングが一般的です。

 もちろん、アナリティックなドリル練習も必要ですが、「それだけで技術は身につかない」と考えられていますので、必ず試合に近いシチュエーションを作り、実戦の中で使える技術を習得させています。

 スペインに来てコーチングスクールでPAD+Eのプロセスを理論として学んで以降、私が技術指導の中で注意するようになったのが体の向きです。体の向きがいい選手というのはプレーできる範囲、見えている視野が広くなりますので、ピッチ上で収集する情報の量が多く、適切な判断ができるようになります。

 すると判断のミスが減りますので、実行部分でのミスも減ります。欧州トップレベルのサッカーを見ていても、現代サッカーにおける「ミス」とはボール扱いの実行部分ではなく、判断ミスによるものがほとんどです。裏を返すと、単なるボール扱いの実行部分で頻繁にミスを犯してしまうような選手は、代表はおろか、プロにもなれません。

 皮肉になってしまいますが、相手(敵)がいない中でプレーをさせると日本人は世界トップレベルだと思います。では、なぜ世界で勝てないかとなった時にやはりボールを受ける前の準備、状況判断といった目に見えないPADの部分を育成年代できちんと指導されておらず、「戦術メモリー(戦術的記憶の積み重ね)」が不足しているからだと考えられます。

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