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香川真司 8年前

今季の香川真司は“どっしり重たい”。ドルト躍進の鍵握るトップ下の“前へ行く”力

text by 本田千尋 photo by Getty Images

不安はキャプテンシーのなさ。期待と不安が入り交じる

 1860ミュンヘン戦では、ワントップのデンベレがサイドに流れて空けたゴール前のスペースに、香川は何度もカストロとともに飛び込んでいる。一回りどっしりとしたが、動きが鈍重になったわけではない。軽快さを失わずに、馬力が加わったようである。

 メリーノら新参者と連係が噛み合わないところもあり、まだアシストやゴールにも至らないように、香川のプレシーズンも始まったばかりだ。それでも“繊細+重厚”といった「何か新しい」香川真司像が、創られつつあるのかもしれない。

 また香川だけでなく、チームとしてのドルトムントも、ザンクトパウリ戦では、ダイレクトプレーでシンプルにゴールに迫る場面が増えるなど「何か新しい」スタイルを模索しているようだ。

“昨季との変わらなさ”を土台に、BVBは「何か新しい」ものを意識的に構築し始めている。

 もちろん、不安要素がないわけではない。キッツビュールの短期合宿では、どこかキャプテンシーが不在だった。フンメルスが去った後で、主将は誰が務めるのか。今季はチャンピオンズリーグもある。

 苦しい時間帯などで、求心力を備えた選手の存在は不可欠だろう。まだ全選手が合流していない中で気が早いかもしれないが、求心力は、チームという生き物がまとまっていくためにやはり必要なものである。

 そして多くの新参者たちは、ドルトムントのコンセプトに順応して、トゥヘルらとともに「創造力を高め、何か新しい解決策を見つけ」ていくことができるだろうか。2シーズン前のインモービレのように、新天地に馴染めずに去ってしまう例も少なくはない。プレシーズンは、プレシーズンというだけで希望に溢れたものになりがちだ。それだけで錯覚を生むことがある。

 ドルトムントは、21日からは中国ツアーに向かう。

 期待と不安のプレシーズンは、始まっている。

(取材・文:本田千尋【デュッセルドルフ】)

【了】

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