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Jリーグ 8年前

浦和・西川周作が作り出す独自のGK像。70m級アシスト。最後尾のゲームメイカー

text by 藤江直人 photo by Getty Images

独自のゴールキーパー像を追い求めて

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日本代表としてもその活躍に期待がかかる【写真:Getty Images】

 ベルマーレ戦では2点をリードして迎えた前半終了間際に、FW大槻周平にゴールを許している。西川から見て右サイドをMF菊池大介に突破され、左足で送られたマイナス気味のクロスに反応できなかった。

 ゴール中央に走り込んできた大槻のボレーはヒットしなかったが、転がるように繰り出した右足で泥臭く押し込まれてしまった。ニアサイドを切っていた西川は「あれはもったいなかった」と自らを戒めることを忘れない。

「よりいい準備と予測ができていれば、何の問題もなかったボールだと思うので。そこは自分とチームの教訓にしながら、次に生かしていきたい」

 菊池が右利きであることを考えれば、体勢的にも左足で精度の高いシュートを放つことは難しい。相手がマイナス気味のクロスを選択せざるをえない状況にあったことを的確に見抜けなかった自分の甘さを、さらなる成長を促す糧としたわけだ。

 9月からはワールドカップ・ロシア大会出場をかけたアジア最終予選が幕を開ける。2次予選では先発フル出場した試合で6戦連続完封を達成。直近の実績では川島や東口らを一歩リードしている状況にあるが、もちろん満足などしていない。

 時間があるときには、ゴールキーパーに関するさまざまな映像をインターネットで探しては、イメージトレーニングの一環として視覚を通して脳裏に焼きつけている。

「いろいろなキーパーの映像を見るようにしています。最近は特にキーパーがミスするシーンを見ることが多いですね。なぜミスが起こったのかをしっかりと見て、自分のプレーに置き換える。いいプレーに関しても、なぜいまのは止められたのかといった点ですね。いいセーブが出るときは、やっぱり準備の段階からいい動きをしているので。

 いろいろな映像を見ながら、基本的な部分というのは大事なんだとあらためて思っています。本当にサッカーばかり見ていますよ」

 ベルマーレ戦でアシストを決めた直後には80メートル近い距離を全力でダッシュし、キーパーグローブをはめたまま殊勲の関根を抱きしめては、笑顔を満開にさせながら何度も頭をなでた。

「常に自分がイメージしていたプレーでもあったし、パスの出し手と受け手の呼吸がばっちり合ったゴールでもあったので。あの小さな関根が最後、球際のところで競り勝ってくれて、しかもヘディングでゴールを決めてくれた。気持ちでも勝っていた姿勢に『頑張ってくれてありがとう。決めてくれてありがとう』と感謝の言葉を伝えたかったんです」

 最後尾からチームメイトに安心感を与えられる、11人目のフィールドプレーヤーをも兼ねる守護神になるために。6月に30歳になった西川は自らにいっさいの妥協を許すことなく、独自のゴールキーパー像を追い求めて、矜持を抱きながら未踏の領域を突き進んでいく。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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