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日本代表 8年前

土壇場で遅れを取り戻した「フラット3」。トルシエが築いた土台。潮流に合った戦術変更【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

アジアカップ制覇後、フランス戦での挫折

1998年から2002年まで日本代表の監督を務めたフィリップ・トルシエ氏
1998年から2002年まで日本代表の監督を務めたフィリップ・トルシエ氏【写真:Getty Images】

 アジアカップに圧勝した後、「ここから一気に加速する」とトルシエ監督は話していたが、フランスとの親善試合で0-5と大敗を喫して出鼻を挫かれた。直後のスペイン戦では、いきなりラインを大きく下げている。ヨーロッパが経験した数年分を1試合で体感したので皮肉な言い方をすれば戦術的には「加速」した。

 ただ、チーム作りとしては挫折である。スペイン戦で相手の監督から「バスを置いた」と揶揄された超守備戦法から、その後は持ち直してワールドカップに臨んでいる。

 その間、何度かフランス戦に似たような試合があった。ラインコントロールの隙を狙われて失点したノルウェー戦があり、1トップ+2シャドーのホンジュラスには3バックの前面を浸食されている。ホンジュラス戦直後の会見でトルシエ監督は「1対1で勝たなければいけない」と話したが、これは自身の「3対7でも守りきれる」と豪語した以前の発言と矛盾している。

 数的不利でも組織で守りきれるはずが、結局は「1対1」で勝たなければダメだと言っていた。ある意味、どちらも本当である。サッカーは1対1があり、組織がある。個と組織は両輪。ただ、キャッチアップに必死だった日本はヨーロッパであったような試行錯誤を経ておらず、トルシエ監督の指導方法も疑義を挟ませない結論ありきだった。組織最優先。そうでなければ2002年には間に合わなかっただろう。しかし、そのために“重み”を欠いていた。

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